日本映画

映画レビュー「恋のいばら」

2023年1月5日
図書館勤めの桃にとっては元カレ。派手なダンサーの莉子にとっては今カレ。そんなカレが撮った自分たちの画像データを二人が狙う。

何もかも正反対の二人が共闘

図書館で司書として働いている桃は、カメラマンの健太朗と別れたばかり。桃をフッた健太朗がいま付き合っているのはダンサーの莉子だ。地味な桃とは正反対の派手で華やかな女性である。

桃は、健太朗のSNSをチェックしていて、たまたま莉子の存在を知った。元カレを奪ったのかもしれない莉子は、桃にとって憎しみを抱いてもおかしくない相手である。

だが、桃は莉子と敵対するどころか、ある目的のために共闘しようと考える。その目的とは、カメラマンの健太朗が所有する自分たちの画像を消去しようというものだった。

いきなりバスの隣席に坐って話しかけてきた桃の不気味さにいったんはドン引きし、無視を決め込んだ莉子。しかし、“リベンジポルノ”というワードを使って不安をあおる桃の話は、徐々に莉子の不安をかき立てていく。

健太朗がそれほどアブナイ男なのかどうかは分からない。モデルの女性に気を遣い、同居する祖母にもやさしい健太朗は、一見すると好感の持てるタイプだ。

しかし、彼には女に手が早いという欠点があった。しかも、健太朗自身はそのことにあまり自覚的ではない。天然の色事師なのだ。

桃と知り合うまでは気付かなかった健太朗の裏の顔に、莉子は不信感を募らせ、桃とともに“犯行計画”を実行するのだが――。

元カノと今カノが共謀し、健太朗という“女の敵”に鉄槌を下す。そんな話だろうと予想して見ていくと、途中から頭に疑問符が浮かび始める。

健太朗というターゲットを攻め落とすまでのサスペンスよりも、そのプロセスにおける桃と莉子との関係のほうにより大きなウェイトが置かれているように思えるからだ。

住む世界もキャラも何もかもが違う二人が、桃の一方的な接近によって出会い、健太朗という唯一の共通項によって結びつき、少しずつ距離を詰めていく。その距離の詰まり方もちょっと変だ。

実は、この不思議さはファースト・カットから始まっている。それが何を意味するのかは、後に伏線として回収されるまでは不明である。この映画はそんな伏線が随所に仕掛けられているので、全体にミステリー映画の趣さえある。着地点が予測できないのである。

はたして、これは一人の男に対する女二人の復讐譚なのか、男一人をめぐる二人の女の恋のさや当てなのか、それとも――。

「愛がなんだ」(2019)で今泉力哉監督と組んだ澤井香織が共同脚本を担当。城定秀夫監督とともに不器用で純粋な女性のラブストーリーを生みだした。

映画レビュー「恋のいばら」

恋のいばら

2023、日本

監督:城定秀夫

出演:松本穂香、玉城ティナ、渡邊圭祐、中島歩、北向珠夕、吉田ウーロン太、吉岡睦雄、不破万作、阪田マサノブ、片岡礼子、白川和子

公開情報: 2023年1月6日 金曜日 より、TOHOシネマズ 日比谷、渋谷シネクイント他 全国ロードショー

公式サイト:https://koinoibara.com/

コピーライト:© 2023「恋のいばら」製作委員会

配給:パルコ

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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