日本映画

映画レビュー「ビリーバーズ」

2022年7月7日
孤島で暮らす3人の男女。カルト教団の信者たちである。教祖を信じ、修業を重ねていたが、徐々に欲望と本性を曝け出していく。

信仰と欲望のせめぎ合い

孤島で共同生活を送る3人の男女。所属するカルト教団の指令を受け、日々修業に励む信者たちだ。

朝起きると、車座で左右の足裏をくっつけ合い、瞑想にふける。その後、食事を摂りながら、昨晩見た夢の話を報告。

さらには、ホワイトボードに各々が頭に浮かべたイメージを描き、その一致具合から、どれだけ一体化し合っているかを確かめる。合言葉は「今日も一日みんなのために頑張りましょう」である。

これらのルーティーンは、俗世間への執着を断ち、煩悩を消し去るために続けられている。年長の男は議長、若い女は副議長、若い男はオペレーターと名乗り、本名は明かされない。

リーダーシップを握っているのは議長である。各々の言動は議長によってジャッジされ、場合によっては懲罰が与えられる。わずか3人の集団だが完全に恐怖政治が機能している。

オペレーターは女性の足に触れる夢を見たことを正直に告白。すると、「邪気を払うため」と、首まで穴に埋められる。

同情した副議長が「実は私も」と淫夢を見たことを漏らすが、聞いたオペレーターはすかさず議長に報告。副議長も穴に放り込まれる。議長の忠実なイヌと化しているオペレーターに隠し事はできないのだ。

並んで埋められた二人。オペレーターは副議長を一晩中見つめている。彼の淫夢に出てきた女性は副議長の顔をしていたのだ。それを聞いた副議長は満更でもない。二人の心が近づく。

議長の病。外部者の侵入、反撃。次々と起こる突発的な出来事によって、3人の関係は揺さぶられ、乱されていく。副議長とオペレーターは激しい恋に落ち、2人の情事を目撃した議長が本性を現わす。

訳の分からぬ理屈で相手を丸め込み、性的関係を迫ってくる議長に、我慢の限界を超えた副議長が逆襲に出る。

劇中、3人が教団に入った理由が徐々に明かされる。親が信者だったから。夫の暴力に耐えられなかったから。少年たちのひどい苛めを受けていたから。

家庭や社会からはじき出された弱者たちが、カルト教団に洗脳され、恐ろしい陰謀に巻き込まれていくのだが――。

カルト教団の内実に迫り、その狂気と虚構性を暴いた山本直樹の原作を映画化したのは、「アルプススタンドのはしの方」のヒット以来、1本のハズレもなく傑作を生産し続ける城定秀夫監督。

Vシネマやピンク映画で培ってきたテクニックと持ち前の映像センスを発揮し、エロス、バイオレンス、ユーモア、ポエジーを絶妙に配合した、見応えある人間ドラマに仕立て上げた。

ビリーバーズ

2022、日本

監督:城定秀夫

出演:磯村勇斗、北村優衣、宇野祥平、毎熊克哉、山本直樹

公開情報: 2022年7月8日 金曜日 より、テアトル新宿他 全国ロードショー

公式サイト:https://believers-movie2022.com/

コピーライト:© 山本直樹・小学館/「ビリーバーズ製作委員会 

配給:クロックワークス+SPOTTED PRODUCTIONS

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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