外国映画

映画レビュー「きれっぱしの愛」

2026年7月1日
大歓迎されてはいないが、拒絶されてもいない。宙吊り状態の中、他に行く場所もない元夫と家族たちとの日常が、淡々と綴られていく。

別れた妻に未練たっぷり

海や丘陵、森や渓谷…。舞台はアイスランドの田舎町。豊かな自然環境の中で、アーティストのアンナは3人の子供たちと生活しながら、アート作品の創作に励んでいる。

元夫で漁師のマグヌスは、そんなアンナに今も未練たっぷり。漁から戻るや躊躇うことなくアンナの家を訪れ、さもそれが当然であるかのように食事をともにするのだ。

いまだ自分を性的対象として見るマグヌスに、子供たちの手前もあるからと突っぱねるアンナ。だが、アンナの反応などどこ吹く風。マグヌスは家族総出のピクニックにも同行し、偶然目にしたアンナのスカートの奥に満悦の表情を浮かべたりするのである。

夫婦に何があったのか。何が原因で別れたのかは説明されない。幼い双子のグリムールとソルギスは、両親の復縁を望んでいるようだが、長女のイダはどうでもよさそうだ。

大歓迎されてはいないが、拒絶もされていない。宙吊り状態の中、他に行く場所もないマグヌスと家族たちとの日常が、淡々と綴られていく。

ただし、本作は決してほんわかしたホームドラマではない。アンナは自分の作品を売り込み、何とか世に出ることを熱望している。そのためには嫌な画廊のオーナーにも愛想を振りまかなければならない。面倒な子育てに加え、いろいろとストレスは絶えない。

ストレスの多くは、マグヌスを筆頭とする男性たちのセクハラを含む女性支配的な言動にも起因しているようだ。マグヌスはいわば男性の代表として、アンナから冷たい仕打ちを受けているのかもしれない。

悪気はないのであろうマグヌスが邪険にされる様子は、見ていて気の毒になるほどで、終盤はまるで罰を受けたかのような窮地に陥る。深刻な状況の中、マグヌスの脳裏に浮かぶのが、ピクニックで目にしたアンナのスカートの奥というのが、切なくも可笑しい。仰角90度の視線で見上げるアンナの股間。壮観である。

アンナの物語とマグヌスの物語、そして本作のもう一つの柱を成しているのが、3人の子供たちの物語である。彼らが何日もかけて丘の上に作った騎士の像に向けて矢を放つ行動は何を意味するのか。マグヌスがパソコンで見る映画「大アマゾンの半魚人」ともども、監督の込めたメッセージがとても気になる。

肩の力が抜けた自然体の演出。だが、人生の奥義のようなものに触れている。一筋縄ではいかない作品である。

映画レビュー「きれっぱしの愛」

きれっぱしの愛

2025、アイスランド/デンマーク/スウェーデン/フランス

監督:フリーヌル・パルマソン

出演:サーガ・ガルザルスドッティル、スベリル・グドナソン

公開情報: 2026年7月3日 金曜日 より、ヒューマントラストシネマ有楽町他 全国ロードショー

公式サイト:https://gaga.ne.jp/kireppashi_ai_NOROSHI/

コピーライト:© STILL VIVID, SNOWGLOBE, HOBAB, MANEKI FILMS, FILM I VÄST, ARTE FRANCE CINEMA

配給:NOROSHI、ギャガ

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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