日本映画

映画レビュー「猫は逃げた」

2022年3月17日
離婚間近のカップル、亜子と広重。その飼い猫が失踪する。互いの浮気相手も巻き込んだ迷走の果てに、二人が見つけたのは?

猫はかすがい!?

漫画家の亜子と週刊誌記者の広重。学生時代に恋仲となり結婚したが、今や夫婦関係は冷え切り、お互いに浮気もしている。

亜子の相手は、担当編集者の松山。原稿取りに自宅を訪れる松山にマッサージをしてもらい、その流れで情事になだれ込む、というのがルーティーンのようだ。

一方、広重の相手は、同僚の真実子。スクープ取材でペアを組み、たまにラブホテルで愛し合う仲だ。離婚すると言いながら、煮え切らない広重に、真実子はイライラを募らせている。

ともに年下の恋人にぞっこんの様子。ならば離婚は秒読みのはずなのだが、なかなかハンコが押せないでいる。ネックとなっているのは、飼い猫カンタの存在だ。

交際中だった二人は、捨て猫だったカンタを見つけ、拾って、結婚した。“できちゃった婚”ならぬ“拾っちゃった婚”である。カンタが二人を結婚に導いたと言ってよい。そのカンタをどちらが引き取るかでモメている。まさに親権争いだ。

ところがある日、カンタが突如として姿をくらましてしまう――。

亜子と広重をかろうじて繋ぎ留めていた愛猫。その失踪は二人の心を引き離すどころか、逆に近づけることになる。同時に、それぞれの浮気相手との関係はぎくしゃくしていく。そして生まれる新たな恋と愛。

「愛なのに」に続く城定秀夫と今泉力哉のコラボレーション作品である。今回は脚本を城定、監督を今泉が担当。ユーモアとペーソスを絶妙なバランスで配合した、極上のラブストーリーに仕上がっている。

4人の男女の恋愛模様を描いた映画。だが、実はもう一組、カンタと雌猫ミミとのロマンスもあり、これが本作の展開において、実に重要な役割を果たしている。

「媚薬」(58)や「ティファニーで朝食を」(61)など、主役ではない猫が強い印象を残す映画がある。その系列に加わる傑作だ。

映画レビュー「猫は逃げた」

猫は逃げた

2021、日本

監督:今泉力哉

出演:⼭本奈⾐瑠、毎熊克哉、⼿島実優、井之脇海、伊藤俊介(オズワルド)、中村久美、オセロ(猫)

公開情報: 2022年3月18日 金曜日 より、新宿武蔵野館他 全国ロードショー

公式サイト:https://www.lr15-movie.com/nekowanigeta/

コピーライト:© 2021『猫は逃げた』フィルムパートナーズ

配給:SPOTTED PRODUCTIONS

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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