天才監督ゴダールと出会い、恋に落ち、結婚したアンヌ。しかし、ゴダールは政治に傾倒。二人の気持ちはしだいに離れていく。

ジャン=リュック・ゴダール。ヌーヴェルヴァーグの旗手として、60年代の映画界を牽引した、伝説的な映画作家。

87歳の今もバリバリの現役である。新作が若手作家の作品と映画賞を競い合うなど、その衰えぬ創作エネルギーには、ただただ驚嘆するばかり。

そんなゴダールの二度目の結婚相手だったのが、アンヌ・ヴィアゼムスキーだ。祖父にノーベル賞作家フランソワ・モーリアック、伯父に作家・映画批評家のクロード・モーリアックを持つサラブレッド。17歳にして、ロベール・ブレッソン監督の「バルタザールどこへ行く」(64)でデビューした。

ヴィアゼムスキーとゴダールは「バルタザール」の撮影中に出会い、やがて恋愛関係となった。そして、ゴダールの新作「中国女」(67)にヴィアゼムスキーが出演。二人は夫婦となる。

しかし、ハネムーンは長続きしなかった。ゴダールは政治活動に熱を入れ始め、二人の気持ちは徐々にすれ違い始める。

「グッバイ・ゴダール!」は、そんな二人の結婚から破綻までを、ヴィアゼムスキーの視点から描いた映画だ。

原作は彼女が書いた自伝的小説。映画化のオファーを断り続けていたヴィアゼムスキーを、「アーティスト」(2011)のミシェル・アザナヴィシウス監督が口説き落とした。

ゴダール役に抜擢されたルイ・ガレルは、「ゴダールの再来」と言われたフィリップ・ガレルの息子。ゴダールをリスペクトするがゆえに二の足を踏んだようだが、やはりアザナヴィシウス監督の熱心な説得に陥落したそうだ。

ゴダールに似ていないのは承知の上。中心人物は、あくまでステイシー・マーティン扮するヴィアゼムスキーなのだ。

と言っても、マーティンだってヴィアゼムスキー似なわけではない。むしろ「男性・女性」(66)のシャンタル・ゴヤに似ている。

実物とはほど遠い二人に対する違和感はさて置き、五月革命のデモ、カンヌ映画祭のゴタゴタ、ゴダールとベルトルッチとの決裂など、次々に紹介されるエピソードはどれも興味深く、飽きさせるところがない。

ガレル、マーティンともに全裸シーンありと、サービスも満点。特に、「軽蔑」(63)のブリジット・バルドーを思わせるマーティンの曲線美はなかなか眼福。

このシーンを含め、随所に「勝手にしやがれ」(60)、「女と男のいる舗道」(62)、「恋人のいる時間」(64)、「気狂いピエロ」(65)、「男性・女性」(66)といったゴダール作品の断片が、映像あるいは音で再現されているのも、面白い趣向だ。

ヴィアゼムスキーの映画でありながら、彼女は時に前妻アンナ・カリーナにも、BBにもなって見せるのだ。

さらに言えば、本編自体が、人物の配置、構図、音声停止など、ゴダールのスタイルや手法を生かした作りになっている。

こういった遊びは、よほどゴダール作品を研究し、技術に精通していない限りできない芸当だ。「アーティスト」でサイレント映画を鮮やかに再現して見せたミシェル・アザナヴィシウス監督ならではの手腕と言えるだろう。

『グッバイ・ゴダール!』(2017、フランス)

監督:ミシェル・アザナヴィシウス
出演:ルイ・ガレル、ステイシー・マーティン、ベレニス・ベジョ

2018年7月13日(金)より、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座他全国ロードショー。

公式サイト:http://gaga.ne.jp/goodby-g/

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