外国映画

映画レビュー「ニューヨークの中国女」

2023年4月21日
ニューヨークで「中国女」が封切られた翌日、ニューヨーク大学の学生たちとゴダールが英語で議論を行った、貴重なドキュメンタリー。

ニューヨークの学生がゴダールに挑む

ニューヨークで「中国女」(67)が封切られた翌日、ニューヨーク大学の学生や大学院生を相手にゴダールは質疑応答を行った。本作はそのときの模様を収めたドキュメンタリーである。撮影を担当しているのは、D・A・ペネベイカーだ。

発言者に向けてカメラを振り、その度にピントが一瞬ボケる。ペネベイカーの味のあるカメラが、映画界の生きるレジェンドに論争を挑む若者たちの、興奮と熱気を余さず映しとっていく。

音の使い方や、編集でカットを選ぶ根拠など、ナイーヴかつ根源的な質問が投げかけられ、ゴダールはその一つひとつに答えていく。答えは直球だったり、変化球だったり、牽制球だったり。

どこまで学生たちは理解できているかは不明だが、ゴダールならではの皮肉やユーモアに包まれた発言は、実に刺激的で楽しい。

一方、俳優のセリフはすべて即興と言いつつ、列車内でアンヌ・ヴィアゼムスキーが哲学者のフランシス・ジャンソンと会話するシーンでは、ヴィアゼムスキーにイヤホンを仕込み、セリフを耳打ちしていたことを告白する正直さも見せる。

すべて英語での議論だが、自分の英語がちゃんと通じているか気にしたり、英語表現が思い浮かばず困ったりする場面に、人の好さが垣間見える。

「中国女」の作中カットが頻繁にインサートされ、議論内容を補完している点もいい。結果的に、映像による「中国女」論と言うべき作品となった。

ニューヨークの中国女

1968、アメリカ

監督:D・A・ペネベイカー、リチャード・リーコック

出演:ジャン=リュック・ゴダール

公開情報: 2023年4月22日 土曜日 より、新宿・K’s cinema他 全国ロードショー

コピーライト:© Pennebaker Hegedus Films / Jane Balfour Service

配給:アダンソニア、ブロードウェイ

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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