外国映画

映画レビュー「勝手にしやがれ」(4Kレストア版)

2022年4月14日
言わずと知れたヌーヴェルヴァーグの金字塔。公開60周年を記念して作られた4Kレストア版が、ベルモンドを追悼し日本初公開。

映画を変えた傑作が4Kで甦る

やや誇張して言うと、今から数十年前、一部の映画青年たちにとって、映画とはゴダールのことであった。映画が好きということは、ゴダールが好きということに他ならなかった。

もちろんゴダールが嫌いという者もいた。夢中になるか、反感をいだくか。いずれにせよ、映画狂にとって、ゴダールは避けて通ることのできない巨大な存在だったのだ。

昔はビデオがなかったから、ゴダールも映画館で見た。名画座の特集上映や、公的機関の特別上映、大学の自主上映などで、60年代のゴダールはほぼ制覇した。なかなか見れなかった「はなればなれに」が日本で公開されたのは、21世紀初頭。東京で見逃し、山梨まで泊りがけで見に行った。執念である。

ゴダールについて語り出すと止まらなくなる。初めて古本屋で買った本も「ゴダール全集」全4巻セット。シナリオ全作を採録したもので、上映時の字幕で理解できなかった箇所をこれで確認したりした。

今回4Kレストア版で公開される「勝手にしやがれ」は、この後、どんどん難解となっていくゴダール作品の中では、圧倒的に分かりやすい映画だ。

長編処女作。有名なジャンプカットをはじめ、撮影も編集も自由で挑戦的だが、ストーリーは単純明快。ならず者のミシェル=ベルモンドがアメリカ娘のパトリシア=セバーグに恋をするが、裏切られ、最後は背中に銃弾を受けて死ぬ。

それにしても、ジャン=ポール・ベルモンドという男は、死にざまの演技が上手い俳優だ。ジーン・セバーグの冷たい視線を浴びながら、自らの手で目を閉じ息絶える。シビれる。

本作と同時公開される「気狂いピエロ」や、本作でゲスト出演しているジャン=ピエール・メルヴィルの「いぬ」でも、カッコいい最期を見せてくれたが、やはりベストは本作だろう。

モーツァルト、ピカソ、ルノアール、フォークナー……。ゴダールのトレードマークである引用とオマージュが本作にもふんだんに散りばめられ、ヒッチコックばりにゴダール自身も登場。

初期衝動に突き動かされ、やりたいように撮り、好きなように繋いだら、映画史を変える作品が出来上がった。

本作で大ブレイクしたベルモンドは、順調にキャリアを重ね、世界的大スターとしての地位を築き、昨年9月に逝去。

今回はベルモンドを追悼し、公開60周年を記念して作られた4Kレストア版を公開。もう1本のゴダール代表作「気狂いピエロ」(2Kレストア版)も同時公開される。

かつて名画座で初めて見たときも、この2本立てだった。あのときの興奮を思い出しながら、ともに美しい映像で再見できる、この幸せ!

映画レビュー「勝手にしやがれ」(4Kレストア版)

勝手にしやがれ

1960、フランス

監督:ジャン=リュック・ゴダール

出演:ジャン=ポール・ベルモンド、ジーン・セバーグ、ダニエル・ブーランジェ、ジャン=ピエール・メルヴィル

公開情報: 2022年4月15日 金曜日 より、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋他 全国ロードショー

公式サイト:http://katte-pierrot.2022.onlyhearts.co.jp/

コピーライト:© STUDIO CANAL

配給:オンリー・ハーツ

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

この投稿にはコメントがまだありません