文化大革命に先立つ“反右派闘争”の真実に光を当てる。ワン・ビン監督が初めて手がけた長編劇映画。

「かつて収容所に送られた右派の人々を、今日のわれわれはどう思うか」

※新作「苦い銭」公開中のワン・ビン監督が、2011年に「無言歌」のキャンペーンで来日した際に書いた会見記事を、一部加筆した上で掲載します。

 

「鉄西区」(99-03)、「鳳鳴-中国の記憶」(07)で、山形国際ドキュメンタリー映画祭のグランプリを2度受賞するなど、ドキュメンタリー作家として世界的に高い評価を受ける中国のワン・ビン監督が、初めて撮った長編劇映画「無言歌」(10)。

文化大革命に先立つ“反右派闘争”の真実に光を当て、世界中で絶賛された本作が12月17日から公開される。キャンペーンのため来日したワン・ビン監督が、10月12日、東京都内で記者会見した。ワン監督は「かつて収容所に送られた右派の人々について、今日のわれわれがどう思い、その歴史をどうとらえるかが重要だ」と語った。

会見は、ワン・ビン監督の全作上映企画の1本として上映された「鳳鳴-中国の記憶」の終了後、一般客も交えて行われた。

質疑応答に先立ち、ワン監督は「自分の作品はとてもパーソナルな作品で、観客の好みは考えずに撮っている。にもかかわらず、多くの観客が見に来てくれたことに心から感謝している」と挨拶。また、「名前のない男」(09)の特別上映で山形国際ドキュメンタリー映画祭に出席した後、仙台で東日本大震災の被災状況を目の当たりにし、「悲惨さに心が痛んだ」と語った。

「無言歌」も「鳳鳴-中国の記憶」も、“反右派闘争”といういわば中国の暗部にふれた作品。当局からマークされたり、盗聴されたりはしなかったのかという質問に対し、ワン監督は「作品は政治とは直接関係ないし、自分のようなちっぽけな人物は注目されることもない」と答えた。

「反右派闘争自体には興味なかった」というワン監督。「無言歌」の製作意図を問われると、「原作を読んで感動し、収容所に送られた人々の姿を、ぜひ映画として描きたいと思った。重要なのは、かつて収容所に送られた右派の人々について、今日のわれわれがどう思い、その歴史をどうとらえるかだ」と語った。

「鳳鳴-中国の記憶」の鳳鳴(フォンミン)さんには、「無言歌」の準備段階で出会い、製作の参考になる話を聞かせてもらったと言う。「鳳鳴-中国の記憶」では、その鳳鳴さんが半右派闘争で受けた迫害の経験を、彼女自身がカメラに向かって話す姿を延々と映し出す。

作品の独特なスタイルについて問われたワン監督は、ポスト・ヌーヴェルヴァーグの旗手として知られるフランスのジャン・ユスターシュの名を挙げ、同監督の「ナンバー・ゼロ」(71)から影響を受けたことを明かした。

ユスターシュ作品同様、「鳳鳴-中国の記憶」では、余計なものを一切加えず、語り手の声を主にしたスタイルをとることで、観客が話に集中できるようにしたと言う。「現代人は他人の話を聞こうとしない。他人の話を聴くことは人間関係の基本だと思う」と、ワン監督は付け加えた。

また、「鳳鳴-中国の記憶」と「無言歌」との違いについて、「前者では“聴く”ことに焦点を定めたスタイルをとったのに対し、後者では(映像を)“見る”ことの可能性を探った」と、対照的な2作品を自ら明快に分析してみせた。

「無言歌」(2010、香港・フランス・ベルギー)

監督:ワン・ビン
出演:ルウ・イエ、リェン・レンジュン、シュー・ツェンツー、ヤン・ハオユー、チョン・ジョンウー、ジン・ニェンソン

公式サイト:http://moviola.jp/mugonka/

コピーライト:ⓒ2010 WIL PRODUCTIONS LES FILMS DE L’ÉTRANGER and ENTRE CHIEN ET LOUP