エドワード・ヤンとホウ・シャオシェン。台湾ニューシネマを牽引した二人がスクラムを組んだ、まさにヌーヴェルヴァーグ的な傑作。

エドワード・ヤン&ホウ・シャオシェン

※現在開催中の「ホウ・シャオシェン大特集」で上映される「台北ストーリー」。第17回東京フィルメックスで上映された際に書いたレビューを、一部加筆した上で掲載します。

第17回東京フィルメックスの特別招待作品として、エドワード・ヤン監督の「台北ストーリー」(85)が上映された(注:この時のタイトル表記は「タイペイ・ストーリー」)。

ホウ・シャオシェン監督とともに台湾ニューシネマを牽引したヤン監督。日本では「牯嶺街少年殺人事件」(91)以降の全作品および「恐怖分子」(86)が劇場公開されているが、長編2作目にあたる「台北ストーリー」はなかなか見るチャンスが少なく、ファンにとって貴重な上映となった。

主たる登場人物は、30代と思(おぼ)しき幼なじみのカップル。マンションで同棲生活を送っているが、蜜月期はとうに過ぎているようで、甘いムードはかけらもない。実は2人とも他の異性と密かに関係を持っている。

男は兄のビジネスを手伝うため、たびたび米国に出張しているが、今ひとつ何をやりたいかがはっきりしない。かつて少年野球の花形選手だったようで、今もたまに子どもたちをコーチしている。野球選手になりたかった過去から解放されていないのだろう。

一方、女は建築設計会社で働いていたが、大企業との合併を機にリストラされてしまう。失業したことで生活基盤が揺るぎ、2人の関係はますます先が見えなくなっている。

ある日、男が出張から持ち帰ったビデオから、男が隠していた密会の事実が発覚。女が男を問い詰めると、男は逆ギレして家を出ていく。女は男との関係を修復しようと、男の行きつけのカラオケ店に電話するが――。

急発展する台北を舞台に、男女の不安定な関係をスタイリッシュな映像で描いた本作。男を演じたのはホウ・シャオシェン、女を演じたのは当時ヤン監督夫人だったツァイ・チン。ほかにも、「多桑 父さん」(94)のウー・ニェンチェン、「光陰的故事」(82)のクー・イーチェンなど、ヤン監督の盟友だった映画作家たちが俳優として参加。ホウ・シャオシェンは脚本、製作も手がけている。

仏ヌーヴェルヴァーグに比肩する大きなうねりを引き起こした台湾ニューシネマ。斬新な映像スタイルもさることながら、盟友同士がスクラムを組んで製作した点でも、まさにヌーヴェルヴァーグ的な1本と言える。

プロ野球や石原裕次郎のテレビCM、日本語カラオケ、日本企業のネオンサイン、さらには少女が口にする渋谷や原宿という名前まで、全編に散りばめられた“日本”も印象的である。

「台北ストーリー」(1985、台湾)

監督:エドワード・ヤン

出演:ツァイ・チン、ホウ・シャオシェン、ウー・ニェンチェン、クー・イーチェン

「台湾巨匠傑作選2021 侯孝賢監督40周年記念 ホウ・シャオシェン大特集」

公式サイト:https://taiwan-kyosho2021.com

関連するレビュー・記事

映画レビュー「風が踊る」デジタルリマスター版
映画レビュー「風が踊る」デジタルリマスター版
CMの撮影で離島を訪れた女性カメラマンが、目の不自由な青年と出会い、心をひかれる。二人は台北で再会し、恋に落ちるが――。

第20回東京フィルメックス オリヴィエ・アサイヤス、ホウ・シャオシェンを語る
第20回東京フィルメックス オリヴィエ・アサイヤス、ホウ・シャオシェンを語る
アサイヤス監督「HHH:侯孝賢」と、ホウ監督「フラワーズ・オブ・シャンハイ」。上映後Q&Aにはアサイヤス監督が登壇した。

「軍中楽園」ニウ・チェンザー監督 単独インタビュー
「軍中楽園」ニウ・チェンザー監督 単独インタビュー
中台攻防の最前線で展開する愛と哀しみの群像劇。「国民党兵士が、あの時代とどう向き合い、どう生きてきたかを描きたかった」