日本映画

映画レビュー「殺さない彼と死なない彼女」

2019年11月15日
Twitter発の人気漫画を実写化した、青春ラブストーリー。間宮祥太朗と桜井日奈子が主人公を好演。劇的な展開が胸を打つ。

孤独な二人が恋に落ちたら

「殺すぞ!」。「死んでやる!」。過激な言葉をぶつけ合い、反発し合うポーズを取る小坂れいと、鹿野なな。実は、強く惹かれ合っている。

鹿野と出会う前、小坂は、あらゆることに興味を持てず、退屈な日々を過ごしていた。一方の鹿野は、何事に対してもネガティブで、周囲から孤立していた。
二人とも周りから浮いた存在。出会った瞬間、相手の中に自分と同じものを見つけたのかもしれない。

しかし、ともに不器用ゆえか、自意識過剰ゆえか、素直に心を表現できない。「好き」とは言えない。さらには、そのことを二人とも承知している。ひねくれているが、純情な二人なのである。

映画は、この二人の物語をメインに、“地味子ときゃぴ子”、“撫子と八千代”という、別の二組のストーリーも織り込みながら、17~18歳という、人生で最も感じやすく傷つきやすい季節の若者たちを、鮮烈に描き出していく。

これまでも「ももいろそらを」(2011)、「ぼんとリンちゃん」(2014)など、独特な感覚で青春の一瞬の煌めきを写し撮ってきた小林啓一監督。

本作では、Twitterへの投稿からブレイクした“世紀末”の4コマ漫画を原作に、キャラクターたちを、リアルな世界の住人へと肉付けし、熱い血の通った青春ドラマへと仕上げている。

出演者はいずれも魅力的だが、やはり何といっても、小坂れいと鹿野ななに扮した間宮祥太朗と桜井日奈子の演技が光る。

投げやりな日々を送っていた二人が、恋に落ちることで、生きる理由を持ち、人間として成長していくプロセスを、自然に、かつ繊細に演じていて、素晴らしい。

特に、桜井は、物語の進行につれて、徐々に表情を和らげていくが、順撮りができない中、シーンが変わるたびに、いわば硬と軟を演じ分けていたというから舌を巻く。

物語の後半、突発的な出来事が起こる。ここで終わりかというクライマックス。しかし、映画はなお続き、予測不能な、驚きの展開を見せる。

エンディングでは、抑えに抑えていた感情が噴き出る。まさかの落涙。上映終了後も、しばらく席を立てなかった。

「ももいろそらを」を見て、青春映画の金字塔だと思った。これを超えるのは容易ではないと思った。だが、小林監督は、本作で見事に処女作超えを果たした。とんでもない映画、そしてとんでもない才能である。

第32回東京国際映画祭 特別招待作品。

殺さない彼と死なない彼女

2019、日本

監督:小林啓一

出演:間宮祥太朗、桜井日奈子、恒松佑里、堀田真由、箭内夢菜、ゆうたろう、金子大地、中尾暢樹、佐藤玲、佐津川愛美、森口瑤子

公式サイト:http://korokare-shikano.jp/

コピーライト:© 2019 映画『殺さない彼と死なない彼女』製作委員会

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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