外国映画

映画レビュー「左利きの少女」

2026年8月13日
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全編にユーモアと人情があふれている。だが、同時に胸がつまるような悲痛な現実も暗示されている。一筋縄でいかない映画である。

少女が見つめる混沌の世界

2025年の第26回東京フィルメックスで観客賞を受賞した本作。当時、本サイトに載せたレビューに加筆した上で再掲載します。

シングルマザーのシューフェンが長女イーアンと次女イージンをバンに乗せて、台北の街へと向かうシーンから映画は始まる。蒸発した夫が作った借金の返済に目処が立ち、人生の再スタートを切ろうと、一度離れた台北に戻ってきたのだ。

シューフェンは夜市で麵屋台を開業するが、病気で入院している夫の医療費を負担するなど、苦労は絶えず、一向に生活は楽にならない。ただし、隣で雑貨屋を営む若い男に惚れられ、お熱い関係になるという、そんな楽しみもないではない。

一方、長女のイーアンはいかがわしいビンロウ屋で働き始めたかと思うと、たちまち店長と関係を持ってしまう。品行方正とはほど遠く、母親に対しても反抗的だが、それは一時的なことではなさそうだ。何か二人の間に因縁めいたものがあるのだろうか。

しかし、日々の暮らしの中で人間関係にいちいち頓着しているゆとりなどはない。立ち止まって考えることなどできないのだ。慌ただしい毎日が繰り返されていく。

そんな大人の世界を幼い次女のイージンはどんな気持ちで見つめるのか。町の中を縦横無尽に駆け回るイージン。彼女の目に飛び込む風景は、混沌の一語だろう。大人たちが繰り広げる猥雑な営みは、フィルターなしにイージンの視覚を直に刺激する。

だが、それは、作品冒頭でイージンが万華鏡を覗く場面が示唆しているように、彼女の視点を通すことにより非現実的でファンタスティックな世界に転じているのかもしれない。本作を支配する鮮やかな色彩設計には、監督のそのような狙いが感じられぬでもない。

逆に言うと、それほど、現実の世界は直視に耐えられぬ出来事に満ちあふれているということである。

祖父から「左手は悪魔の手」と言われたイージンが犯した罪は無邪気なものだ。だが、終盤、突如としてイーアンによって暴かれる罪は衝撃的だ。まだ5歳のイージンにはピンとこないだろうが、やがて真実を知ることで、人生の理不尽さ、残酷さを思い知るに違いない。

全編にユーモアと人情があふれている。だが、同時に胸がつまるような悲痛な現実も暗示されている。なかなか一筋縄でいかない映画なのである。

撮影はiPhoneを使用。活気あふれる夜市や行き交う人々を、すばやく自然に映像化する上で、素晴らしい効果を発揮している。

映画レビュー「左利きの少女」

左利きの少女

2025、台湾/フランス/アメリカ/イギリス

監督:ツォウ・シーチン

出演:ニーナ・イエ、マー・シーユエン、ジャネル・ツァイ

公開情報: 2026年8月14日 金曜日 より、ヒューマントラストシネマ有楽町他 全国ロードショー

公式サイト:https://cinema.starcat.co.jp/left-handed-girl/

コピーライト:© 2025 LEFT-HANDED GIRL FILM PRODUCTION COMPANY LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.

配給:スターキャットアルバトロス・フィルム

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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