日本映画

映画レビュー「鍵」

2026年6月11日
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コミカルな雰囲気にあふれ、いまおか監督ならではの人情やファンタジーにも富む。これまでの「鍵」とはひと味もふた味も違う作品だ。

妻を部下と浮気させる

工務店を営む剣持は、末期ガンで余命半年と宣告される。気がかりは妻の郁子のことだ。悲しませたくない。苦しめたくない。一体どう切り出したらいいのか。悩んでいるうちに、時間ばかりが過ぎていく。

何となく様子がおかしい剣持を、浮気しているのではと怪しむ郁子。しかし、郁子にゾッコンの剣持が浮気などあり得ない。年老いて精力が衰えはしたが、郁子を抱きたい、独占したいという気持ちはむしろ募るばかりだ。

逡巡した末、ついに剣持は郁子に事実を打ち明ける。「みんないつか死ぬ。早いか遅いかだけだ」となだめる剣持に、郁子は「ふざけないで」と感情を爆発させる。さらに剣持は、会社の部下である木村と浮気しろと言い出す。

死んでいく自分のことなど忘れ、浮気をして人生を楽しんでほしい。そんな剣持の真意を知ったとて、承知できる話ではない。ところがある日、郁子は突然態度を変え、木村との交際を宣言するのである。

自分から言い出した話なのに、いざ受け入れられると、ムラムラと嫉妬心が起こる。何とも人間っぽい剣持の反応が微笑ましい。吹越満がハマり役である。

また、貞節だった郁子がなぜ浮気話に乗ったのか、木村との恋愛関係を含め、エンディングに浮かび上がる真相に胸がじんとする。

谷崎潤一郎の同名小説を原作とした七度目の映画化作品。ほとんどの過去作と同様、主人公が妻を他人にあてがう点、夫婦が互いの日記を盗み見る点、妻が入浴中に眠ってしまう点などは原作を踏襲しているが、妻を浮気させる動機が本作は独自の設定となっている。

ほかにも、剣持の元妻や、剣持に付きまとう死神など、登場人物は基本的にいわゆる“陽キャラ”で、全編にコミカルな雰囲気があふれている。いまおか監督ならではの人情やファンタジーにも富み、これまでの「鍵」とはひと味もふた味も違う作品となった。

映画レビュー「鍵」

2026、日本

監督:いまおかしんじ

出演:吹越満、菅野恵、小出恵介、丸純子、那波隆史、佐倉萌、新藤まなみ、釜國まひろ、治田敦

公開情報: 2026年6月12日 金曜日 より、シネマート新宿他 全国ロードショー

公式サイト:https://x.com/imaoka_film2026

コピーライト:© 2026「鍵」製作委員会

配給:ムービー・アクト・プロジェクト

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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