リム・カーワイ監督の鮮烈なデビュー作
世界を放浪し、10年ぶりに故郷に帰ってきた男、ア・ジェ。さっそく自宅を訪ね、家族の者に話しかけるが、反応がない。ア・ジェのことを知らないと言うのだ。
近所の住人も同様。ア・ジェを知る者は一人もいない。ア・ジェは相手を知っているのに、相手はア・ジェを知らないのだ。

ア・ジェを知っていたのは、食堂の主人ラオ・ファンだけだった。ア・ジェはラオ・ファンから教えられ、秘密を知る人物に会いに行く。

しかし、その人物はア・ジェの目の前で殺されてしまう。そして、あろうことか、ア・ジェはその犯人とされ、公開処刑されてしまうのだ。
ラオ・ファンやその娘メイリンを含む多くの住民が、ア・ジェの処刑を無表情に見つめる姿が、何とも不気味である。

こうして一つの謎に満ちた物語が終わる。と同時に、ようやく本作のタイトルが映し出され、画面はモノクロからカラーへ、サイズもスタンダードからワイドへと変わる。

仮にモノクロ版をパート1とし、カラー版をパート2としよう。パート2においてもパート1同様に、ア・ジェとラオ・ファン、メイリンは、主要な人物として登場する。ただし、それぞれの人物像は大きく変わっている。

死んだはずのア・ジェが何事もなかったかのように登場し、その死を目撃したはずのラオ・ファンとメイリンも、そんなことは一切なかったようにふるまっているのだ。

無機的で感情の希薄だったキャラクターから一転し、各人物は人間的な感情を露わにし、それぞれの人生を生きているように見える。パート1のシュールな空気感は消え、ノーマルな物語が展開していくかと思われる。

しかし、ア・ジェの予想外な行動により、パート2のテイストは激変、パート1の不条理なテイストがにわかに甦る。一仕事終えたア・ジェを乗せ走り去って行く長距離列車を、延々と映し続けるラストカットが圧巻である。
リム・カーワイ監督のデビュー作。後年“分かりやすい映画”を撮り続けた同じ監督とは思えぬ前衛的な作風に驚かされるが、これがカーワイ監督の本領なのかもしれない。デジタル・リマスター版で日本劇場初公開。
アフター・オール・ディーズ・イヤーズ
マレーシア/中国/日本
監督:リム・カーワイ
出演:大塚匡将、ゴウジー、ホー・ウェンチャオ
公開情報: 2025年11月29日 土曜日 より、イメージフォーラム他 全国ロードショー
公式サイト:https://sites.google.com/view/afteralltheseyears2025/
コピーライト:© cinemadrifters
配給:Cinema Drifters

