英国バレエの粋
クラシック・バレエの最高峰「白鳥の湖」。悪魔の手によって白鳥の姿に変えられた王女オデットと、母親から花嫁選びを迫られ悩む王子ジークフリートの出会いと悲恋をドラマティックに描いた、まさに名作中の名作である。
2018年5月、英国ロイヤル・バレエ団は、天才振付家リアム・スカーレットと気鋭の美術家ジョン・マクファーレンを起用し、31年ぶりの新演出による「白鳥の湖」を上演。英国バレエらしい演劇性あふれる壮麗な舞台は高い評価を獲得した。
本作は、2022年5月に上演されたこの新バージョンでの舞台を収録した映画作品である。ステージ全体を映すだけでなく、随所にダンサーのアップを挿み、映画ならではの迫力を生み出している。
また、幕間の観客席にもカメラが向けられ、上演当日の観客と一体化したライブ感を味わうことができる。
さらに、ロイヤル・バレエの元プリンシパルであるダーシー・バッセルによる、芸術監督のケヴィン・オヘアや主力ダンサーへのインタビューは、本作をより深く理解し味わう上で大きな助けとなるだろう。
オデット/オディール役は、昨年の出産から舞台復帰したローレン・カスバートソン。ジークフリート王子を演じるのは、今年5月にプリンシパルに昇格した新星ウィリアム・ブレイスウェル。悪魔のロットバルトは名優ギャリー・エイヴィスが演じている。
吉田都や熊川哲也をはじめ、ロイヤル・バレエ団からは多くの日本人ダンサーが輩出しているが、本公演でも準主役のベンノにアクリ瑠嘉、大きな白鳥の一人に佐々木万璃子、小さな白鳥の一人とイタリアの王女の二役に前田紗江と、要所要所で存在感を放っている。
全4幕構成。やはり第2幕が最大の見どころだろうか。ジークフリートが途方に暮れて佇んでいると、いつのまにか場面が湖へと移っている――リアム・スカーレットとジョン・マクファーレンが考案した場面転換が鮮やかだ。
続いて、オデットとジークフリートの主役二人による情熱的なパ・ド・ドゥ、そして白鳥たちによる美しい群舞。流れるように次々とフォーメーションを変えていくダンサーたちの華麗な技としなやかな肢体に目を酔わされる。
英国ロイヤル・オペラ・ハウスで上演されたバレエ&オペラの舞台と特別映像をスクリーンで体験できる英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2021/22。そのフィナーレを飾るにふさわしいプログラムである。
ロイヤル・バレエ「白鳥の湖」
2022、イギリス
演出:リアム・スカーレット
出演:ローレン・カスバートソン、ウィリアム・ブレイスウェル、クリスティーナ・アレスティス、ギャリー・エイヴィス、アクリ瑠嘉
公開情報:2022年7月15日 金曜日 より、TOHO シネマズ 日本橋他全国ロードショー
公式サイト:http://tohotowa.co.jp/roh/
メイン・コピーライト:©2018 ROH. Photograph by Bill Cooper
サブ・コピーライト:©2018 ROH. Photograph by Helen Maybanks
配給:東宝東和
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