監督は「エクソシスト」の原作者
山奥にそびえる古城。いかにも中欧の雰囲気だが、場所はアメリカ。ベトナム戦争で精神を病んだ帰還兵が収容されている施設なのだ。
どの患者も服装や言動が常軌を逸しており、どう見ても普通ではないが、戦争を逃れるために異常を装っている可能性もある。本物の患者を治療しつつ、偽者の患者を暴き出すことも、この施設の役割らしい。

とは言うものの、精神科医をはじめとするスタッフは、患者の奇行や妄言に対し、ほとんど無為無策の体。それどころか、自ら道化を演じて患者に同調している気味さえあるのだ。すべてが壮大な企みであるようにも思える。

この奇妙な施設に新しいスタッフが着任する。精神科医のハドソン・ケーン大佐だ。元海兵隊員で、口数少なく、何を考えているのか分からない、ミステリアスな人物。
彼の執務室には、コスプレ趣味の多重人格者や、犬を主人公とした芝居の上演準備を進めている二人組など、さまざまな患者が訪れ、毒づいたり、論戦を仕掛けたりしていく。

中でも執拗なまでにケーンに絡んでくるのが、宇宙飛行士のカットショー大尉だ。ロケットの発射直前に逃げ出し、世間的に注目を浴びたこの男に、ケーンは興味を引かれる。二人の距離は縮まり、やがて真剣な神学論争を戦わし、日曜のミサを共にするまでになる。

そんなとき、新入りの患者がやってくる。戦地でケーンの部下だったギルマンだ。対峙した瞬間、ケーンの抑圧してきた記憶が甦る。古城を包む霧のようにケーンの正体を覆い隠していたヴェールが、一気に剝ぎ取られる。

ケーンのよき話し相手だった軍医のフェル大佐の正体も、ケーンが着任した経緯も、すべてが明かされ、映画はトーンを一変させる。前半を支配していたシュールなコメディの雰囲気が消えると、画面にはサスペンスが漲り、ついには封印してきたバイオレンスが爆発する。

溜めに溜めたケーンの戦闘能力を解き放つことで、前半にさりげなく仕込んでいた伏線を回収する。見事な作劇だ。正気を取り戻したケーンとカーショーの心がつながる終盤の流れ、そして神の存在を仄めかすラストの締め方も秀逸である。

原作・脚本・監督は、「エクソシスト」(73)の原作・脚本を手がけたウィリアム・ピーター・ブラッティ。ホラー作家であり、コメディ作家でもあるブラッティの個性が生かされた異色作だ。
トゥインクル・トゥインクル・キラー・カーン
1980、アメリカ
監督:ウィリアム・ピーター・ブラッティ
出演:ステイシー・キーチ、スコット・ウィルソン、ジェイソン・ミラー、エド・フランダース、ネヴィル・ブランド、ジョージ・ディセンゾ、モーゼス・ガン、ロバート・ロッジア
公開情報: 2026年5月29日 金曜日 より、シネマリス他 全国ロードショー
公式サイト:https://shinjukuhardcore.jp/
コピーライト:© 2026 American Genre Film Archive © 1979 The Ninth Configuration Company. All Rights Reserved.
配給:コピアポア・フィルム

