日本映画

映画レビュー「れいわ一揆」

2020年9月10日
2019年の参院選で健闘した“れいわ新選組”に密着。原一男監督の長編ドキュメンタリー、ついに公開。

れいわ新選組の選挙運動に密着

※2019年東京国際映画祭での上映後、本サイトに掲載した記事を、一部加筆した上で再掲載します。

2019年の参院選で2議席を獲得、諸派から晴れて国政政党となった、れいわ新選組。本作は、選挙に挑む候補者たちに密着し、彼らの奮闘する姿を描いたドキュメンタリー映画だ。

山本太郎代表以下、候補者10人全員が登場するが、その中でも、原一男監督が主役に選んだのは、安富歩(あゆみ)。“女性装”で知られる東大教授である。

弱者を搾取する自民党政治を徹底批判。カンパ金でレンタルした白馬を引き連れ、「子供を守ること」をスローガンに、全国を行脚する。

馬を目当てに、子供連れの主婦はパラパラ集まるものの、「都市は記号化されている」「人間は記号化された都市から排除され、それが孤独や苦悩を生み出している」といった安富の主張は、難解すぎて彼らに届かない。

そんな安富の後を、ピアニカやカウベルを奏でながら、お供の楽士たちがついて行く。どこか滑稽であり、もの悲しくもある。ドン・キホーテのような風情である。

安富の行脚風景の合間には、他候補者の街頭演説風景や、それらをフォローし、盛り上げるカリスマ・山本太郎の水際立った応援演説が挿まる。敵対する丸川珠代候補などの姿もとらえられる。

徐々に投票日が迫ってくる。安富も演説のコツをつかみ始めたか、難解な言葉は減り、聴衆の感情に訴えかけるスピーチへと進化していく。

圧巻は、地元の大阪での演説。開発の名のもとに破壊された風景を嘆き、目を潤ませる安富の言葉に、聴衆がじっと耳を傾ける。ああ、こんな人だったんだな。映画を見るほうもぐっと胸が詰まる。

想田和弘監督の「選挙」(2007)とは視点が異なるが、一人の経験乏しい立候補者の選挙運動を描く点は同じ。安富の運動を通じて、現代の政治に巣食っている問題点、そして、れいわ新選組に突き付けられた課題を、浮き彫りにしている。

原一男監督の人選は間違っていなかったと思う。

れいわ一揆

2019、日本

監督:原一男

公開情報: 2020年9月11日 金曜日 より、アップリンク渋谷他 全国ロードショー

公式サイト:http://docudocu.jp/reiwa/

コピーライト:© 風狂映画舎

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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