一人の神父による、多数の児童への、長年にわたる性的虐待。フランスを震撼させた、スキャンダラスな事件が暴かれる。

神父が児童に性的虐待

一人の神父によって、多数の児童が、長年にわたって、性的虐待を受けていた!本作は、フランスを震撼させた、このスキャンダラスな事件を暴き、告発に踏み切った男たちの姿を描いた作品である。

主な登場人物は三人。いずれも、少年期に教会やキャンプ場で被害に遭った男たちだ。

一人目が、被害者として事件を最初に告発するアレクサンドル。加害者であるプレナ神父が現在もなお子供たちに聖書を教え続けていることに愕然とし、30年の沈黙を破って、告発に踏み切った。だが、容易に聖職のベールは剥がせない。

二人目が、メディアを積極的に活用し、被害を訴えるフランソワだ。プレナ神父の行為を暴く母親の手紙を発見した警察から連絡を受け、抑圧していた怒りが爆発。告発運動の先頭に立つ。

そして三人目が、エマニュエル。フランソワが中心になって開いた記者会見の記事に触発され、自分も被害者の一人であることをカミングアウトした。

前半では、教会権力に立ち向かうが、巧妙に跳ね返されるアレクサンドルの姿にフォーカスが当てられている。アレクサンドルは、自分も妻も子供たちもカトリック教徒。なおかつ銀行員としての社会的立場上、その行動には自ずと限界があり、それが教会を相手に闘う上で大きなネックになっている。

その点、中盤の主役となるフランソワは無神論者であり、アレクサンドルのようなしがらみとは無縁。警察もメディアも引き込み、思い切った攻撃に打って出る。

後半、このフランソワを中心とした被害者グループにアレクサンドルが合流し、さらにエマニュエルも加わり、プレナ神父と教会権力を追い詰めていく。

最初は一人の男が上げた小さな声。それが次々と反響を広げ、大きな叫びとなって、絶大な権力に守られた卑劣な犯罪者に痛撃を与えていくのだ。

事件の裁判は現在も係争中。最終的なジャッジは出ていない。この映画が、裁判の結果を左右する可能性もあるため、神父側からは上映差し止めの訴えがあったという。

いずれにせよ、物議を醸す作品である。メガホンをとったのは、「危険なプロット」(2012)や「2重螺旋の恋人」(2017)などの鬼才フランソワ・オゾン。

奇想・幻想を自在に操り、人間のグロテスクな本質を暴き出すスタイルで知られる監督だが、本作は、真正面から事件に向き合って、当事者の苦悩や葛藤を共感あふれる眼差しで見つめ、堂々たる人間ドラマに仕上げている。

性犯罪は「プレナ神父事件」だけではない。世の中には至るところで性犯罪が発生し、多くの被害者を生んでいる。オゾン監督は、そういった声なき被害者の存在に光を当てることも忘れず、本作に普遍的なメッセージ性を与えている。

『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』(2019、フランス)

監督:フランソワ・オゾン
出演:メルヴィル・プポー、ドゥニ・メノーシェ、スワン・アルロー、ジョジアーヌ・バラスコ、エレーヌ・ヴァンサン

2020年7月17日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷他全国ロードショー。

公式サイト:https://graceofgod-movie.com/

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