日本映画

映画レビュー「見上げてごらん」

2026年10月29日
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マンガ家になる夢は捨て、アシスタントに徹してきた42歳の土屋。そんな万年下積み男にチャンス到来。ついに夢は叶うのか。

夢が叶う人は一握り

42歳の土屋輝一は、大御所マンガ家・吉住のアシスタント。いずれは自分も売れっ子のマンガ家に! 若い頃はそんな夢を抱いていたはずだが、ずるずるとアシスタントを続け、年だけとってしまった。

年下の同僚アシスタントたちにとっては、頼りになる兄貴分だ。しかし、かつて机を並べていた後輩アシスタントがデビューを果たし、仕事場まで挨拶にやってくると、嫉妬心がムラムラ。「こんなのを描くんだったら、一生アシスタントでいいわ」と、作品を読みもせずに毒づくのである。

別居中の妻・莉花は人気声優。苦労することなく成功をつかんでしまった莉花に対する土屋の感情は複雑だ。一方、高校受験を控えた娘・ひかりとは良好な関係を築いており、「何かになりたくてそうなる人は一握り。気楽にいこうぜ」と肩の力を抜いて見せる。もちろん、それが強がりであることは見抜かれているのだが。

そんな土屋にチャンス到来。吉住の担当編集者だった潮田ユキが、土屋と新人アシスタント・山田ぽてとに、二人でマンガを共作してみないかとオファーしてきたのだ。久々にマンガへの情熱に火が付いた土屋。ついに道は開かれるのか――。

マンガ家に憧れる者は多いだろう。しかし、劇中で土屋がひかりに語るように、夢が叶うのは限られた人だけだ。業界歴の長い土屋は、厳しい現実を嫌と言うほど承知している。にも関わらず、野望を捨て切れないのは人間の性(さが)というものだろう。

これはマンガ家に限った話ではない。ミュージシャン、作家、映画監督、スポーツ選手、お笑い芸人……。誰もが一度はスターを夢見る。だが、才能は不平等だ。たいがいの人は早々に諦め、堅気の職業に就く。

ところが、マンガ家の厄介なところは、アシスタントという受け皿のあることだ。マンガ家の手足として働く仕事が、職業として確立しているところが、他の仕事とちょっと違う。だから、いつまでも夢を引きずり続ける土屋のような人間が、マンガ業界には多いのかもしれない。

本作は、そんな微妙な立ち位置で生きる中年男の姿を、ユーモラスに描いた作品だ。主人公に扮するのは、カリスマ性あふれる演技派・森田剛。余人をもって代えがたい圧倒的な演技力で、個性的なキャストたちを見事に牽引している。

監督は森本晶一と佐藤快磨が共同で務めているが、脚本は、助監督歴の長い森本自身の体験がベースにあると言う。“縁の下の力持ち”の悲哀と滑稽さが、客観的な視点から絶妙に表現されているのは、そのせいだろうか。ラストの意表を突いたオチは、これぞ“マンガ的”な発想。素晴らしい。

映画レビュー「見上げてごらん」

見上げてごらん

2026、日本

監督:森本晶一、佐藤快磨

出演:森田剛、森川葵、川上友里、阿部寛、松本まりか、武田鉄矢、早瀬憩

公開情報: 2026年10月30日 金曜日 より、テアトル新宿他 全国ロードショー

公式サイト:https://gaga.ne.jp/miagetegoran

コピーライト:© 2026 「見上げてごらん」製作委員会

配給:ギャガ

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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