外国映画

映画レビュー「シラート」

2026年6月4日
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レイヴが導く砂漠の地獄旅。人間の運命とは、ここまで不条理なものなのか。あまりに唐突、あまりに非情な展開に言葉を失う。

圧倒的な没入感

砂漠のレイヴパーティ。積み上げられたスピーカーから、重低音のテクノサウンドが流れ出す。上半身を揺らしながら陶然とした表情でステップを踏む参加者たち。社会にフィットできない者たちにとって、ここは一種の解放区となっているのだろう。そこに、場違いな二人が飛び込んでくる。行方不明の娘を探しにきた父親と幼い息子だ。

誰彼かまわず娘の写真を見せるが、知る者はいない。もしかしたら次のレイヴ会場にいるかも、という参加者の声に望みをかける。

 

オールナイトのパーティが続く。と突然、軍が侵入。会場は封鎖され、ただちに帰路に就くよう求められる。近くで戦闘が起きたようだ。

不承不承、会場を後にする参加者たち。ところが、あるグループが隙を見て別ルートへとハンドルを切り、何台かの車が後に続いた。父子も後を追う。先頭を切って行ったのが、レイヴ会場で会話を交わしたグループだったのだ。父親は彼らに同行することにした。

男3人、女2人のレイヴァ―5人と父子との旅が始まる。広大な砂漠、険しい山岳地帯。キャンプを続けながら、いくつもの難所をクリアしていく。軍隊に発見されないよう、あえて危険な崖道を走行。一歩間違えれば、命を落とす。

次第に、車がどこへ向かって走っているのかさえ分からなくなってくる。娘を探すという本来の目的は遠ざかり、父子ら一行は思いもかけぬアクシデントに見舞われていく。人間の運命とはここまで理不尽なものか。あまりに唐突、あまりに非情な展開に言葉を失う。

しかし、考えてみれば、それが現実というものかもしれない。人生は平和で安全が当たり前という考えは、甘すぎるのかもしれない。

戦争、紛争は世界各地で起きている。安全地帯にも陥穽がある。落ちるか落ちないか。決めるのは自分ではない。運命だ。この映画のすごさは、このような人生の不条理を、見せてくれるのではなく、体験させてくれる点にある。

冒頭、レイヴパーティの場面に響きわたる重低音のサウンドは、まるで自分もその場にいるかのような錯覚に陥るほどの没入感をもたらす。レイヴのリズムは心臓の脈動音だ。また終盤のクライマックスでは、登場人物たちと自分の心理が完全にシンクロしたかのような、生々しい感情を味わうことになるだろう。ぜひ劇場で体験してほしい。

映画レビュー「シラート」

シラート

2025、スペイン/フランス

監督:オリベル・ラシェ

出演:セルジ・ロペス、ブルーノ・ヌニェス・アルホナ、ステファニア・ガッダ、ジョシュア・リアム・ヘンダーソン、トナン・ジャンヴィエ、ジャド・オウキッド、リチャード・ベラミー

公開情報: 2026年6月5日 金曜日 より、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamura ル・シネマ 渋⾕宮下他 全国ロードショー

公式サイト:https://transformer.co.jp/m/sirat/

コピーライト:© 2025 LOS DESERTORES FILMS, A.I.E., TELEFONICA AUDIOVISUAL DIGITAL, S.L.U.,FILMES DA ERMIDA,S.L., EL DESEO DA, S.L.U., URI FILMS, S.L.,4A4 PRODUCTIONS

配給:トランスフォーマー

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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