日本映画

映画レビュー「ゴールド・ボーイ」

2024年3月7日
崖から男女が落下する。中学生三人が偶然それを撮影していた。殺人だった。三人は犯人に近づき金を脅し取ろうとするが――。

殺人鬼VS中学生の息詰まる頭脳戦

13歳の中学生三人がたまたま撮った動画。映っていたのは、殺人の瞬間だった。映像を拡大し犯人を特定した三人は、その男を脅して金を巻き上げようと画策するが――。

恐喝しようと持ちかけるのは安室朝陽。学校では成績トップの秀才で、子供とは思えない冷静沈着な少年だ。

そんな朝陽を信頼し、指示どおりに動くのが、上間浩。朝陽とは久々の再会だった。突然、義理の妹・夏月を連れて現れたのは、夏月が義父を包丁で刺してしまったからだった。

死んでしまったら殺人罪。怯える二人だが、朝陽は「少年法が守ってくれる」と言って二人の気持ちを軽くする。

ちょうど夏休が始まったばかり。浩がカツアゲした金で三人は街に出て遊びまくる。朝陽の母親が働くホテルを訪れた後、殺人を目撃した。

現場は青い海にそそり立つ断崖。突き落とされたのは二人。那覇を代表する企業グループの会長夫妻だった。加害者は、その娘婿・昇である。

昇は妻の静と夫婦関係が破綻していた。離婚は秒読み。別れてすべてを失う前に、何か手を打つ必要があった。会長夫妻の殺害はその第一弾といったところだろう。

静は昇が犯人であることを確信し、親戚関係にある刑事の巌に相談を持ちかけるが、証拠はない。昇はあくまで事故だと主張し、巌の前で泣き崩れる。もちろん芝居である。

ごまかし通せる。そう高を括っていた昇の前に出現したのが、朝陽ら三人の中学生だった。不意を突かれ一瞬動揺するものの、相手はしょせん子供。昇の表情に侮りが見て取れる。

だが、相手は思いのほか手強かった。朝陽は数学コンテストのチャンピオンで、とてつもなく頭のキレる少年だった。一方、昇もかつてコンテストに出て準優勝した経歴がある。

頭脳明晰な殺人鬼と、冷静沈着な天才少年。ともに非凡な二人が、相手の出方を予測しながら、手を打っていく。もはや駆け引きというよりは、チェスのような緊迫した勝負が繰り広げられていく。

バトルを進めるかたわら、朝陽は夏月との間に恋を育んでいく。また、同時に心の闇を露呈していく。そしてクライマックス。息詰まるバトルは、二転三転したあげく、予想外の決着を迎える。

だが、物語は終わらない。さらに、意表を突くアクシデントとともに、序盤から仕掛けられていた伏線が回収され、劇的なラストを呼び込むのである。

中国で大ヒットしたドラマを、脚本・港岳彦、監督・金子修介の強力コンビで日本映画化。冷酷無比な主人公を岡田将生が好演し、先例のない悪役像を作り上げた。

映画レビュー「ゴールド・ボーイ」

ゴールド・ボーイ

2024、日本

監督:金子修介

出演:岡田将生、黒木華、羽村仁成、北村一輝、松井玲奈、星乃あんな、前出燿志、江口洋介

公開情報: 2024年3月8日 金曜日 より、 全国ロードショー

公式サイト:https://gold-boy.com/

コピーライト:© 2024『ゴールド・ボーイ』製作委員会

配給:東京テアトル/チームジョイ

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

この投稿にはコメントがまだありません