日本映画

映画レビュー「違う惑星の変な恋人」

2024年1月25日
5人の男女が恋をする。しかし、何と全員が片思い。一筋縄では行かない男女の恋愛関係。ゴールを決めるのは誰なのか。

恋のゲームは決着するのか

美容師のグリコと、同僚で新人のむっちゃんは、音楽の話題で意気投合。シモキタにナカヤマシューコのライブを聴きに行く。

会場にはグリコの旧友でレコード会社に勤めるベンジーも来ていた。久しぶりに再会したグリコは、むっちゃんにベンジーを紹介。むっちゃんはたちまち彼の虜になってしまう。

その後、むっちゃんは、グリコが元カレ・モーくんのアパートに残した荷物を引き取りに行く際に同行し、モーくんと友だちになる。

ベンジーと接近したいむっちゃんは、モーくんに相談し、モーくんとグリコも交えた4人でデートする作戦に出る。まだグリコに未練があるらしいモーくんにとっても、おいしい話だ。はたして、作戦は功を奏するのだろうか。

むっちゃんは、見るからに恋の初心者。一方、ベンジーは、いかにも女慣れしたプレイボーイ風。あまりに恋愛力に開きのあるこの二人の、恋の行方はいかに――。

「女子高生に殺されたい」(2022)、「Love Will Tear Us Apart」(2023)などで窮地に追い込まれる美少女役を好演してきた莉子が、むっちゃん役として持ち味を発揮し、ここでも格別な輝きを放っている。

かたやベンジーには、まさにハマリ役と言うべき中島歩。軽薄で自信満々なモテ男ぶりは、余人を以て替え難いオーラを感じさせる。

この2人の関係をメインに据えつつ、グリコ、モーくん、そしてナカヤマシューコという5人の男女が、恋愛ゲームを繰り広げる話である。

それぞれに本命の相手がいるのだが、いつのまにか標的が変わっていたり、あっさりフラれてしまったり。一貫してブレないむっちゃん以外は、気まぐれなのか、計算なのか、各々の恋のベクトルは意外な相手に向けられ、次第に収拾がつかなくなる。

一対一の2ショット長回しを多用しながら、短いエピソードを積み重ね、恋の誕生、消滅、変心といった瞬間を切り取っていく。その軽快な話法と全編に漂うユーモアがとても心地よい。

むっちゃんと純情コンビを組むモーくん、ある意味ベンジー以上にしたたかなグリコ。それぞれ、筧美和子と綱啓永がこちらも適役。また、ナカヤマシューコ役をシンガーソングライターのみらんがナチュラルに演じているのも見どころだ。

男と女のひと筋縄では行かない関係を、ポップなスタイルでリアルに描いた、ユニークな恋愛群像劇。さて、ゴールを決めるのは誰だろう?

映画レビュー「違う惑星の変な恋人」

違う惑星の変な恋人

2023、日本

監督:木村聡志

出演:莉子、筧美和子、中島歩、綱啓永、みらん、村田凪、金野美穂、坂ノ上茜

公開情報: 2024年1月26日 金曜日 より、新宿武蔵野館他 全国ロードショー

公式サイト:https://chigawaku.com/

コピーライト:© 「違う惑星の変な恋人」製作委員会

配給:SPOTTED PRODUCTIONS

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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