日本映画

映画レビュー「東京遭難」

2023年11月17日
酔いつぶれたサラリーマンの進一がホテルで目覚めると、目の前には若い女性。彼女は進一に、運転手として3日間同行しろと命じた。

女は見知らぬ男を連れて旅に出た

取引先の接待でしこたま酒を飲み、酔いつぶれたサラリーマンの進一。終電で目を覚ますと、財布や携帯電話の入ったカバンがない。盗まれたらしい。

スーツのポケットには“えりな”と書かれた名刺。顔も覚えていないホステスだが、とりあえず助けを求めようと電話し、メッセージを入れると、ベンチで再び眠りこけてしまう。

誰かに起こされ目を覚ますと、目の前には若い女性。場所はホテルだった。“えりな“に違いない。助かったと安心する進一だったが、彼女は、助けた代わりに、3日間運転手として一緒に過ごせと言う。金も携帯電話もなく、家にも帰れない進一は、彼女の命令に従うしかなかった。

“えりな”は進一に行き先も目的も知らせない。半ば男を拉致した状態で、2泊3日の小旅行を強いるわけだ。年下の女性が年上の男性の弱みに付け込んでコントロールするという設定が面白い。

とは言え、相手は男。車中も宿も二人っきりだ。進一が安全な男という保証はない。途中で逃げられるかもしれない。

なぜ“えりな”が男性に対し、そこまで無防備なのか。そういったことも含め、先行きの展開に興味をかき立てられる。

二人の関係が少し変化するのは、“えりな”が実は別人であることを進一が知ってからだ。こっそりバッグの中を覗き見て、進一は彼女が“えりな”ではないことに気づく。

しかたなく彼女は本名を隠したまま、旅行の目的を打ち明ける。それは、彼女が幼女時代に経験したある事件と関係していた。

一方、進一にも忘れがたい記憶があった。それはトラウマとなって進一を苦しめていた。進一は寝言で口にした女性の名を“えりな”に聞かれ、自らの過去を彼女に語る。

こうして、映画は、それぞれに傷ついた二人が、旅を続ける中で、心を通わせ合っていく様子を、道中の美しい自然風景を交えながら、繊細に描出していく。

節度ある距離感と危険な距離感。その間を微妙に揺れ動きながら、二人の関係は確実に変化していく。未来への可能性を残したラストシーンが爽やか。背景となる富士山のショットも絶品だ。

映画レビュー「東京遭難」

東京遭難

2023、日本

監督:加藤綾佳

出演:木原勝利、秋谷百音、今里真、占部房子

公開情報: 2023年11月18日 土曜日 より、新宿K's cinema他 全国ロードショー

公式サイト:https://tokyo-sounan.themedia.jp/

配給:GOLD FISH FILMS=LIVEUP

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

この投稿にはコメントがまだありません