日本映画

映画レビュー「ゴーストスクワッド」

2018年3月2日
無残に命を奪われた少女たちが幽霊となって出現。ヒロインのパワーを借りて、憎むべき犯人たちに壮絶な戦いを挑む。

命を奪われた少女たちへの鎮魂歌

「ゾンビアス」(2011)や「変態団」(2015)など、井口昇監督というと、少女に対する欲望むきだしの、エロティックかつグロテスクな作品の印象が強い。ところが、前作「キネマ純情」(2016)では、エログロの分量をぐっと抑制。少女の内面に深く踏み込んだ、鮮烈な青春映画を誕生させた。

主演したのは、監督自ら主催したオーディションで選ばれた5人のアイドルグループ「ノーメイクス」。「ゴーストスクワッド」は、その主演第二作だ。

主人公のリカ(柳杏奈)は、会社をクビになった父親から虐待され、恋人との関係も破綻。生きる気力を失い、自殺を試みるが失敗する。「死んでもらっちゃ困る」と自殺を阻んだのは、幽霊の少女ケイコ(上埜すみれ)だった。

ケイコと、アカリ(神門実里)と、ヨシエ(洪潤梨)。3人の幽霊が、リカに取り憑き、自分たちを殺した男たちへの復讐を手伝ってほしいと言う。

3人とも十代で非道な殺され方をしていた。恨みを晴らさない限り、成仏できない。天国にも行けないのだ。

そんな彼女たちの願いを叶えるべく、地縛霊のナオミ(中村朝佳)を加えた4人とともに、リカは憎むべき犯人たちに壮絶な戦いを挑むのだが――。

実在の事件がベースにあるのだろう。犯行シーンは生々しく、残虐そのものだ。罪もない少女が、理不尽な暴力によって、命を奪われた。その無念さを共有し、義憤に駆られ、復讐に手を貸すリカ。彼女のキャラクターには、井口監督自身が投影されているに違いない。

「キネマ純情」に見られた少女への共感、愛情は、本作にも変わらず貫かれている。いや、むしろその程度はいよいよ激しく強くなっているようにも思える。
井口監督のアイデンティティーというべき少女愛が、ますますエスカレートし、さらに刺激的な作品を生み出してくれるよう期待したい。

ゴーストスクワッド

2017、日本

監督:井口昇

出演:神門実里、洪潤梨、上埜すみれ、柳杏奈、島津健太郎、なべやかん、中村朝佳、阿部亮平、阿部能丸

公開情報: 2018年3月3日 土曜日 より、アップリンク渋谷他 全国ロードショー

コピーライト:© 2017 WONDER HEAD

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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