外国映画

映画レビュー「シェイプ・オブ・ウォーター」

2018年2月27日
1962年、東西冷戦時代のアメリカ。政府の研究所で働く清掃婦のイライザは、極秘裏に運び込まれた半魚人に恋をする。

人魚姫が半魚人に恋をした

1962年、東西冷戦時代のアメリカ。政府の極秘研究所で清掃婦をしているイライザは、アマゾンから極秘裏に運び込まれた生物(半魚人)に心を奪われる。

水槽に閉じ込められている彼と密会し、しだいに心を通い合わせていくイライザ。幼少期のトラウマで口がきけないが、彼とのコミュニケーションに言葉は不要だ。

やがて、イライザは、宇宙開発に利用するため、彼を生体実験しようという国家の計画に気づく。彼に命の危険が迫る。イライザは彼を救うため、隣人のジャイルズや同僚のゼルダに力を借り、国の権力者に必死の闘いを挑んでいく。

言葉を持たないプリンセスの話をどう語るべきか――。映画の冒頭、ジャイルズの声でナレーションが流れる。

勘のいい観客ははたと気づくだろう。そう、イライザは尻尾を人間の足に変えるのと引き換えに声を奪われた人魚姫なのだ。だからこそ、彼女は半魚人である彼と、いとも簡単に心を通わせ、恋に落ちてしまったのではないか。

自室の真下にある映画館で現実から逃避し、ロマンティックな夢を育んでいたイライザ。そんな彼女がついに巡り合った運命の君。その命を助けるため、そして二人の愛を守るため、イライザは敢然と敵に立ち向かうのである。

イライザの前に立ちはだかる憎むべき敵、それはストリックランドというエリート軍人。彼は、ロマンティストであるイライザとは正反対のリアリストだ。

「ポジティブ・シンキング」というタイトルの本を愛読する、自己肯定の男。東西冷戦という現実の中で、与えられた使命を完遂することが、彼にとって生きる証なのである。したがって、邪魔立てするものは徹底的に排除する。

はたして、イライザの愛はストリックランドの圧倒的な権力によって押しつぶされてしまうのか。無慈悲な暴力の前にあえなくも屈してしまうのか――。

「ブルージャスミン」(2013)のサリー・ホーキンスが、ロマンティックでありつつも、生々しい欲望をたぎらせるヒロインを好演。アカデミー賞の主演女優賞候補となった。ほかに、作品賞、監督賞、助演男優賞、助演女優賞など、最多13部門ノミネート。

シェイプ・オブ・ウォーター

2017、アメリカ

監督:ギレルモ・デル・トロ

出演:サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、ダグ・ジョーンズ、マイケル・スツールバーグ、オクタヴィア・スペンサー

公開情報: 2018年3月1日 木曜日 より、TOHOシネマズ シャンテ他 全国ロードショー

コピーライト:© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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