外国映画

映画レビュー「アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド」

2022年1月13日
アバターの性能を試すため、一緒に過ごすことになったアルマ。“お試し”のはずが、いつしか離れ難い感情が芽生えて――。

アバターと人間が恋をする

ベルリンの博物館で楔形(くさびがた)文字の研究に携わるアルマ。多額の研究資金と引き換えに、極秘の実験に参加することになる。それは、ある企業で開発された男性アバター(アンドロイド)と3週間過ごし、その性能を評価するというものだった。

紹介されたアバターはトムという名で、見たところ、人間そのもの。おまけに頭脳明晰でハンサム・ガイである。エキゾチック好みのアルマに合わせ、話すドイツ語にはイギリス訛りまである。

トムの使命は、独身のアルマを幸福にすること。膨大なデータを元に、トムは甘いセリフを囁き、ロマンティックな演出でアルマを喜ばせようとする。

しかし、研究や父親の介護で忙しいアルマにとって、至れり尽くせりのサービスは鬱陶しいだけ。人間と違って決してミスを犯さない完璧さにも、かえってイライラし、ついついトムに冷たい態度を取ってしまう。

だが、驚くべきはトムの学習能力である。アルマのネガティブな反応をフィードバックしながら、トムは見る見るうちにアルマの求める男へと変身していくのだ。

しだいに、アルマはトムの存在を受け容れていく。単に頭がよいだけではなく、気配りもでき、判断力も行動力もあるトムに、アルマは心を開いていく。

そんなアルマにトムはショッキングな事実を知らせる。アルマが全精力を傾けて取り組んできた研究を、外国のライバル学者が先に完成させ、雑誌に発表してしまったのだ。

アルマは自暴自棄となるが、これがきっかけとなって、二人は急速に心の距離を縮めていく。そして、最初のクライマックス。「私をアバターと思って」。「僕を人間と思って」。禁断の領域に踏み入るラブシーンは実に美しく、かつスリリングである。

予想もしなかった展開に、アルマは戸惑い、煩悶する。相手はアバター。人間ではない。感情はないはずだ。なのに、なぜか心が通い合う。女としてのつらい過去、少女時代の恋など、人には言えないことも、トムとは共有できるのだ。

しかし、実験は終わり、別れの時が訪れる。去って行くトムの姿をベランダから見つめるアルマ。だが、これでフィニッシュとはならない。ここからエンディングに至る予想外の流れに、思わず息を呑む。

テクノロジーは愛を実現できるのか。人間とアバターとの恋愛は可能なのか――。根源的な問いを投げかけていたSF映画が、いつのまにかロマンティックなラブファンタジーへと転換している。

マリア・シュラーダー監督の魔法のような演出、そしてベルリンの美しい都市風景に酔いしれた。

映画レビュー「アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド」

アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド

2021、ドイツ

監督:マリア・シュラーダー

出演:マレン・エッゲルト、ダン・スティーヴンス、ザンドラ・ヒュラー

公開情報: 2022年1月14日 金曜日 より、新宿ピカデリー、Bunkamura ル・シネマ他 全国ロードショー

公式サイト:https://imyourman-movie.com/

コピーライト:© 2021, LETTERBOX FILMPRODUKTION, SÜDWESTRUNDFUNK

配給:アルバトロス・フィルム

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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