日本映画

映画レビュー「恋の罪」

2021年10月8日
ラブホテル街で殺人事件が発生。死体は分断され、マネキンの頭部や下半身が接合されていた。死体は誰で、犯人は何者なのか?

地獄に堕ちる女たち

※「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」公開中の園子温監督作品「恋の罪」(2011)公開時に書いたレビューを、一部加筆した上で掲載します。

東京・渋谷のラブホテル街で、猟奇殺人事件が発生する。女性刑事が駆けつけた現場は、廃屋と化した古アパート。

死体は分断され、マネキンの頭部や下半身が接合されていた。死体は誰なのか? そして犯人は何者なのか?

冒頭に映し出されるのは、ラブホテルで不倫相手と激しくセックスする女性刑事、吉田和子(水野美紀)の姿である。彼女は携帯電話で連絡を受け、現場に直行する。

現場は恐らく同じホテル街で、大して離れていない。その近さは、後に明らかになる被害者像と和子との相似性を示唆しているようであり、なかなか興味深い。

物語の中心人物は、和子のほかに2人。流行作家の夫を持つ専業主婦の菊池いずみ(神楽坂恵)と、有名大学で日本文学を教える助教授の尾沢美津子(冨樫真)だ。

ともに社会的身分は申し分ないが、内面には満たされぬものを抱えている。いずみは従順な仮面の下に、自分の体を求めない夫への不満をたぎらせている。美津子は大学の講義を終えると、売春婦として街角に立ち、狂ったように男を漁(あさ)っていた。

いずみは、パートに出たスーパーでスカウトに声をかけられたのをきっかけに、AV(アダルトビデオ)への出演、行きずりの情事と、行動をエスカレート。やがて美津子と出会うことで、その破滅的な世界観に染まり、売春の世界へと踏み入っていく。

貞淑な人妻だったいずみが、ひとたび過ちを犯すや、みるみる転げ落ちていくプロセスが見ものだ。初めて夫以外の男とセックスをした後、いずみは自宅で鏡に向かって全裸になり、体をくねらせながら「試食どうですか? おいしいですよ」と、苦手だったスーパーでの試食販売を練習する。

女としての自信にあふれたいずみの笑顔が、美しくもふてぶてしい。女の底知れぬ怖さが垣間見えるシーンとして、また凄絶な転落劇の開始を告げるシーンとして、強烈な印象を残す。

いずみに扮した神楽坂恵は、園子温監督の前作「冷たい熱帯魚」(01)の主婦役を好演して注目されたが、今回はさらに存在感を増している。

貞淑な人妻から狂気の売春婦まで変幻自在に演じ切り、女の業を見事に表現。神楽坂の存在は作品に決定的なパワーを与えている。

尾沢美津子役の冨樫真、吉田和子役の水野美紀とともに、逃げも隠れもせず全裸を堂々とさらした体当たりの熱演は、絶賛に値しよう。

なお3女優の全裸シーンゆえか、本作はR-18指定だそうだ。多感な年ごろの中高生にこそ見てほしいのに、何とも罪な話である。

恋の罪

2011、日本

監督:園子温

出演:水野美紀、冨樫真、神楽坂恵、児嶋一哉、二階堂智、小林竜樹、内田慈、大方斐紗子、津田寛治

公式サイト:https://www.nikkatsu.com/movie/official/koi-tumi/index.html

コピーライト:© 2011「恋の罪」製作委員会

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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