日本映画

映画レビュー「かば」

大阪・西成区。差別と偏見にさらされる過酷な環境の中、必死に生きる子どもたち。そんな彼らと向き合い、ぶつかり合う教師がいた。

大阪・西成に実在した熱血教師

「部落、在日、沖縄のどれや?」。新任の女性教師・加藤を、生徒たちが詰問するシーンに、ドキリとさせられた。

大阪・西成区。住民の多くが差別や偏見の対象であり、貧困の中で荒んだ生活を送っている。そういった事実について、漠然とした知識は持っているものの、部落とか在日とか、直截(ちょくせつ)なセリフで聞かされると、「ウッ」とたじろいでしまう。

これまでも、西成区を舞台とした映画を見たことはあったが、少なからずオブラートで包まれていて、隔靴掻痒(かっかそうよう)の感を免れなかった。

ところが、本作は、一切の自主規制なく、西成区の実態をストレートに描いている。その意味では、いわゆる社会派の映画と言えるだろう。

ただし、ありがちなドキュメンタリータッチの硬派な作品とは全然違う。青春学園ドラマのテイストを湛えた、極上のエンターテインメント作品に仕上げられているのだ。

ベテラン教師の“かば”こと蒲先生。新任講師の加藤。父親がヤクザで不登校の転校生・良太。酒浸りの父親と水商売の母親を持つ裕子。そして、部落出身の卒業生・由貴。映画は、これらの人物が互いにふれ合い、ぶつかり合い、理解し合う姿を、感動的なエピソードの連なりとして描いている。

比較的豊かな家庭の出身である加藤は、最初こそ荒れた生徒たちに手を焼くが、蒲先生のサポートを受けながら、だんだんと学校生活に馴染んでいく。

学生時代にソフトボールでならした加藤。野球部のコーチを任せられるが、冒頭に記したように生徒たちは敵対的だった。ところが、生徒の投げる球をことごとくホームランにしたことで、一気に生徒との距離を縮める。

しかし、野球部の活動に没頭するあまり、加藤は悩みを相談しようとする裕子への対応がおざなりになり、裕子を窮地に追い込んでしまう。苦境に立つ裕子と加藤が、痛ましい事件を経て関係を修復するプロセスは、裕子役・さくら若菜の好演もあり、本作の白眉をなすエピソードとなっている。

ほかにも、蒲先生が根気よく反抗的な良太の心を開いていくエピソードや、恋人の差別心を知り悩む卒業生・由貴と蒲先生が再会するエピソードなど、いずれも独立した短編として成立し得る濃密な物語が、ときに痛快に、ときに情感豊かに綴られていく。

人情味あふれる作品であるが、ただ胸を熱くさせて終わることなく、とんがった社会派作品たり得ているのは、川本貴弘監督が2年半にわたる取材で手にしたリアリティが、作品の隅々まで行き渡っているためだろう。

企画から完成まで7年。紆余曲折を経てようやく産声を上げた作品だ。だが、公開がこの時期になったのはよかった。コロナ禍と五輪で、社会の分断と対立が深まる今日ほど、本作の放つメッセージが響くときはないからだ。

『かば』(2021、日本)

監督:川本貴弘

出演:山中アラタ、折目真穂、近藤里奈、木村知貴、さくら若菜、辻笙

2021年7月24日(土)より、新宿K’s cinema他全国ロードショー。

公式サイト:https://kaba-cinema.com

コピーライト:©映画「かば」制作委員会

 

1 コメント

  1. 匿名

    嘘ばっかりの映画、
    カバって、全然立派な教師じゃなかった。

コメント

この記事の感想をお寄せください