「パーティしましょう」の一言に千客万来。次から次へとやってくる怪しい人々で、豪邸は手の付けられないカオスと化す。

そして豪邸はカオスと化した

ギャンブルで借金を作り、自宅を手放す羽目になった笹谷修次(いとうせいこう)。荷物の整理も終わり、後は引っ越し業者を待つだけ。古いアルバムを眺めながら一人感慨にふけっていた。

娘のあかね(小川未祐)は、甲斐性のない父親に愛想を尽かし、ふてくされている。憂さ晴らしのつもりか、「今日、パーティしましょう。誰でも来てください」とツイートしてみる。すると、たちまち誰かがリツイート。“いいね”の数も急増していった。

修次の別れた妻・昭子(南果歩)、ゲイの国際カップル、ワケありの中国人母子、自転車旅行中の青年、近所の子供、猫と老人……。多種多様な人々に、テキヤやDJまで集まり、ひっそり閑(かん)としていた笹谷家の中庭は、夏祭りさながらの喧騒に包まれていく。

ナンパ、セックス、麻薬、賭博、妊娠、何でもあり。欲望に歯止めはなく、快楽は貪り放題。他人はお構いなしの、マイペース、自分ファースト。アクシデントも超常現象もすべて吞み込んで、“パーティ”は手の付けられないカオスと化す――。

あり得ないシーンの連続である。たとえば、首をナイフで刺されたゲイカップルが、それぞれナイフを抜いて血しぶきを上げ、平然と互いの首に刺し戻す場面。

こんな画を撮ったら面白いだろうな。そう思ったら、躊躇(ためら)わずに実行してしまうのが、山本政志監督なのだろう。

凡庸な監督だったら確実にスベるであろう無茶なアイデアも、この才人の手にかかると、最高にハジケた画になって、見る者を唸らせてしまうのである。

浴衣姿の南果歩が忍者のようにふわりと飛ぶ場面なんて、その発想自体がぶっ飛んでいる。文脈上、何の必然性もないこのアクションが、しかし見る者にはとてつもない映画的快感を与えてくれるから不思議。

3カップルの同時多発セックスが、古代ローマ人VS巨大コーヒー豆のバトルを導く展開なんか、ゾクゾクするほど興奮させられる。とにかく、全編にわたり不条理でシュールなエピソードが満載なのだ。

圧巻は、盆踊りのミュージカル場面だ。キレキレのダンスパートと、出演者総出で自由に踊りまくるパートとの二部構成。スクリーンいっぱいに幸福感があふれ出るこのシーンでは、ヒロインの小川未祐が本領を発揮し、見事なダンスを披露しているので、しっかり見届けてほしい。

SF,オカルトなど、さまざまな要素を融通無碍に組み合わせた、脳天直撃のハイパー・コメディ。東京五輪で地獄を見る前に、本作で極楽気分に浸っておこう。

今回、山本政志監督の過去作7本がデジタルリマスター版として復活。本作を含む全16作が “山本政志脳天映画祭”として一挙上映される。豪華ゲストを招いたトークショーも併せ、全制覇を狙いたい。

『脳天パラダイス』(2020、日本)

監督:山本政志

南果歩、いとうせいこう、田本清嵐、小川未祐、玄理、村上淳、古田新太、柄本明

2021年6月26日(土)より、新宿K `s cinema他全国ロードショー。

公式サイト:https://no-ten.com

コピーライト:🄫2020 Continental Circus Pictures