労働搾取や不正取引で暴利をむさぼり、ファッション界の頂点を極めた男。60歳の誕生パーティで彼を待ち受けていた運命とは――。

ファッション界の暴君に鉄槌

ギリシャのミコノス島といえば、ハリウッド映画にもしばしば登場するヨーロッパ屈指の高級リゾート地である。その美しいビーチを見下ろす絶好の場所で、映画のセットのようなものが組み立てられている。どうやら古代ローマのコロッセオ(円形競技場)らしい。

そんなものを作って何をするのか? 英国ファストファッション界の覇者、リチャード・マクリディが60歳の誕生パーティを催すのである。いわゆるイメージ戦略の一環だ。

マクリディは一代で成り上がった立志伝中の人物。成功の裏には、労働搾取や不正取引、脱税など、ブラックな行動の数々がある。だが、マクリディに罪悪感は皆無。

自分と身内さえ裕福であれば、他はどうでもよいのだ。ビーチに移民の姿を見つければ「目障りだから追い払え」。途上国の貧しい人々など眼中にない。

傲慢なパワハラ男だが、スタッフにとっては雇い主。逆らえるはずもなく、パーティの準備が進められていく。

どうせやるなら、思いきり派手に。各界のセレブを招待し、剣闘ショーのためにライオンまで用意する。しかし、予想外のトラブルが勃発し、現場は混乱に陥る――。

パーティの準備が始まる5日前から、本番までの6日間を追った作品だ。マクリディを中心に、元妻のサマンサ、母親のマーガレット、娘のリリー、息子のフィン、さらにはマクリディの伝記を書くために雇われた作家ニックも含め、さまざまな人間模様を描く群像劇として構成されている。

最も注目したいのは、マクリディに扮するスティーヴ・クーガンの怪演スレスレな役作りだ。日焼けした顔に、不自然なほど白く大きな義歯が、キラリと光る。嫌な奴だが憎めないマクリディの個性を、何とも絶妙に表現し得ていて、これはもう余人をもって代えがたい名人芸と言ってよい。

しかし、いかにクーガンが好演しようと、過去にマクリディが重ねてきた暴君のような行いを、マイケル・ウィンターボトム監督は、決して赦すことはない。

宴もたけなわとなった頃、マクリディに下される裁きとは――。

パーティの狂騒に荘厳なギリシャ神話を重ねて、資本主義の暗部を抉(えぐ)ってみせる、ウィンターボトム監督の巧みな作劇術に脱帽だ。

『グリード ファストファッション帝国の真実』(2019、イギリス)

監督:マイケル・ウィンターボトム

出演:スティーヴ・クーガン、アイラ・フィッシャー、シャーリー・ヘンダーソン、エイサ・バターフィールド、デヴィッド・ミッチェル、ディニタ・ゴーヒル

2021年6月18日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー。

公式サイト:http://greed-japan.com

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