日本映画

映画レビュー「女たち」

2021年5月31日
障害を持つ母と二人暮らしの美咲。恋人に裏切られ、親友に死なれ、心の拠りどころを失った美咲に、さらなる不運が降りかかり――。

痛みと怒りに耐える女たち

美咲は不運な女である。大学を出たが希望の教職には就けず、保育所の非正規労働に甘んじている。同居する母親は体が麻痺し、発話も不自由だ。

早くに自殺で父親を失った。母一人子一人の、逃げ場なき空間で、母親の罵声や我儘に耐えながら介護を強いられる日々。職場の同僚との関係も良好とは言い難く、ストレスは募るばかりだ。

そんな美咲にとって救いとなっているのは、幼馴染の香織が営む養蜂場で過ごす長閑(のどか)なひとときと、ヘルパーとして家を訪れる直樹との恋愛だ。痛みと怒りの毎日ではあるが、そのマイナスを補って余りある充実した時間。

ところが、美咲はこの大切な二人を相次いで失ってしまう。まずは、直樹。突然、担当ヘルパーが外国人女性に代わってしまったのだ。「異動しました」。寝耳に水。納得できない美咲は直樹の家に出向くが、そこで目にしたのは、想像もしていなかった直樹の実像だった。

追い打ちをかけるように、香織が消える。二度と会えない世界へと旅立ってしまったのだ。それは美咲が直樹との修羅場に突入しようとしている真っ最中の出来事だった。香織は美咲も知らないトラウマを抱えていたのだ。

香織の妹との出会いは小さな支えになったものの、美咲はさらなる不運に巻き込まれる。不幸の連鎖にあえぐ美咲。だが、崩壊寸前の美咲に、やがて仄かな希望の光が差す――。

美咲と直樹が欲望を迸(ほとばし)らせるように演じる濡れ場の生々しさ。直樹の自宅に侵入した美咲が全身丸見えの状況で、往生際悪く顔を隠し続ける姿の滑稽さ。

さらには、美咲と母の美津子が憎悪と殺意をむき出しにバトルを展開するクライマックス。また、香織に扮した倉科カナがラストで見せる圧巻の一人芝居。

いずれも、リアリストたる内田伸輝監督の真骨頂。「ふゆの獣」(2010)や「おだやかな日常」(2012)で見せた内田演出の切れ味は健在である。

コロナ禍の世相や、社会的弱者としての女性といった今日的テーマも織り込み、これまでにない女性映画の傑作が誕生した。

女たち

2021、日本

監督:内田伸輝

出演:篠原ゆき子、倉科カナ、高畑淳子、サヘル・ローズ、窪塚俊介、筒井茄奈子

公開情報: 2021年6月1日 火曜日 より、TOHOシネマズ シャンテ他 全国ロードショー

公式サイト:https://onnatachi.official-movie.com

コピーライト:© 「女たち」製作委員会

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

この映画をAmazonで今すぐ観る

この投稿にはコメントがまだありません