“魔女狩り”を描く映画の撮影現場。監督、女優、プロデューサーらの呼吸が合わず混沌を極めるが、突如として奇跡が起こる。

鬼才ギャスパー・ノエの問題作

“てんかん発作の直前には、一瞬、恍惚の時が訪れる”。冒頭に映し出されるのは、ドストエフスキーの言葉の引用。次いで、カール・ドライヤーの「怒りの日」の映像が流れる。

そして、ドライヤーの言葉の引用。“我々映画人には、映画を商品から芸術に高める責任がある”。これは、アーティストであるギャスパー・ノエ自身のマニフェストでもあろう。

「怒りの日」で火刑に処される女性の映像。“その真に迫った表情は、2時間も磔(はりつけ)にされたがゆえだ”という、映画雑誌の文章が紹介される。まさに、ドライヤーによって芸術にまで高められた映像がここにあるというわけだ。

映画マニアの心を鷲掴みにする導入部に続き、いよいよ主役の登場。ベアトリス・ダルとシャルロット・ゲンズブールである。二分割されたスクリーンで両者が対話する。

主にベアトリスが話して、シャルロットが相槌を打つ。二人がこれから撮ろうとしている映画のテーマ“魔女狩り”が主な話題。過去の撮影話や、若い頃の武勇伝も披露される。

やがて撮影の準備に入る。ベアトリスは監督、シャルロットは主演女優である。プロデューサーと撮影監督はベアトリスを信用していないようだ。他のスタッフも自己中心的で、スタジオ内はてんでんばらばら。

求心力を欠いたまま、撮影本番。磔にされたシャルロット。燃え盛る炎。撮影監督がカメラを構える。ヴェルディの「レクイエム」が響き渡るが、ベアトリスもシャルロットも、いまひとつ盛り上がらない。

しかし、ここで奇跡が起こる。照明トラブルで、スタジオの空気が一変するのだ。パニックに陥っていたシャルロットは、しだいに感情を鎮め、恍惚とした表情へ。

映画は、混沌から荘厳へと劇的な転調を遂げる。クライマックスの映像と音は、まさにギャスパー・ノエの真骨頂である。

劇中、ドストエフスキー、ドライヤーのほかにも、ゴダール、ファスビンダー、ブニュエルにオマージュが捧げられている。この人選にもギャスパー・ノエのセンスが光る。

アートプロジェクト「SELF」プロジェクト作品。

『ルクス・エテルナ 永遠の光』(2019、フランス)

監督:ギャスパー・ノエ

出演:シャルロット・ゲンズブール、ベアトリス・ダル、アビー・リー・カーショウ

「のむコレ2020」にて、2020年11月20日(金)より、シネマート新宿、シネマート心斎橋で先行公開。

公式サイト:http://www.luxaeterna.jp

コピーライト:(C)2020 SAINT LAURENT-VIXENS-LES CINEMAS DE LA ZONE

■SELF:アートと深い関わりを持ち続けるファッションブランド、サンローランのクリエイティブディレクター、アンソニー・ヴァカレロが「様々な個性の複雑性を強調しながら、サンローランを想起させるアーティストの視点を通して現代社会を描く」というコンセプトでスタートさせたアートプロジェクト。「ルクス・エテルナ 永遠の光」はそのプロジェクト作品として制作され、2018年カンヌ国際映画祭監督週間にて芸術映画賞を受賞した『CLIMAX クライマックス』に続き、2019年同映画祭ミッドナイトスクリーニングにて上映された。

■のむコレ2020:一昨年立ち上がった新たな劇場発信型映画祭「のむらコレクション」(通称:のむコレ)。シネマート新宿/心斎橋の番組編成担当・野村武寛(のむらたけとも)氏が、アジア映画に強いシネマートらしく、韓国・中国・香港は勿論、世界中から話題作をいち早く集めた、要チェックなレア作品が目白押しの映画祭。https://www.cinemart.co.jp/dc/o/nomucolle2020.html