外国映画

映画レビュー「セブン・シスターズ」

2020年11月9日
1家族で子供は1人だけ。冷酷なルールの中、7つ子の姉妹が誕生。祖父は全員を守るため、7人を1人の子に偽装することに。

ノオミ・ラパス圧巻の1人7役

※「ストックホルム・ケース」公開中のノオミ・ラパス主演作品「セブン・シスターズ」(2016)公開時に書いたレビューを、一部加筆した上で掲載します。

爆発的な人口増と深刻な食糧難に直面する近未来社会。当局は、1家族につき出産は1人のみとする“一人っ子政策”を強行する。

違反すれば、2人目以降の子供は冷凍保存。地球環境の回復を待ち、解凍・蘇生させる約束だが、保証はない。

そんな中、ある病院で7つ子の姉妹が生まれる。発覚すれば6人が冷凍されてしまう。

死亡した母親に代わって孫娘たちを引き取った祖父は、7人全員を守るため、秘策を思いつく。それは、7つ子を1人の子に見せかけること。

マンデー(月曜)からサンデー(日曜)まで、曜日の名を付けられた7つ子は、それぞれの曜日に交代で外出し、カレン・セットマンという共通人格を演じるのだ。

幸運にもトリックは見破られることなく、成人した姉妹は銀行員としてエリート街道を歩んでいる。ところが、ある日、マンデーが出勤したきり行方不明に。

2人同時に目撃されるリスクはあったが、姿を見せなければ怪しまれる。翌日、チューズデー(火曜)は勇を鼓して出勤。残りの姉妹たちと連絡を取り合いながらマンデーの行方を追うのだが――。

中盤から始まるバトルが見ものだ。“児童分配局”から差し向けられた武装軍団と姉妹たちとの熾烈な闘い。中でも、身体能力に秀でたウェンズデー(水曜)が男たち相手に繰り広げる激闘は迫力満点だ。

1人また1人と姉妹たちを失いながらも、終盤のクライマックスに至り、サーズデー(木曜)はついにマンデー失踪の真相を探り当てる。そこで彼女が目にした恐るべき秘密とは?

一卵性ゆえ見た目はそっくりだが、性格や能力は七人七色。微妙に異なる7人を、「ミレニアム ドラゴンタトゥーの女」(2009年)、「プロメテウス」(2012年)のノオミ・ラパスが精妙に演じ分けている。7人のラパスが一堂に会する映像は圧巻だ。

献身的な祖父役はウィレム・デフォー、児童分配局の悪玉役はグレン・クローズ。どっしりと脇を固め、ノオミ・ラパスの独壇場を盛り上げる両名優の見事な役作りにも注目したい。

地球規模の人口爆発、そして産児制限。実際に起きている現象だ。解凍技術は未開発ながら、人体の冷凍保存も現実に行われている。近未来SFだが、設定はリアル。人類の明日を予言したような怖さが漂う映画だ。

セブン・シスターズ

2016年、イギリス/アメリカ/フランス/ベルギー

監督:トミー・ウィルコラ

出演:ノオミ・ラパス、グレン・クローズ、ウィレム・デフォー

コピーライト:© SEVEN SIBLINGS LIMITED AND SND 2016

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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