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SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020 受賞作「願い」、「写真の女」

2020年10月8日
オンライン配信された今年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭。グランプリにはノルウェー・スウェーデン合作「願い」が選ばれた。

9月26日(土)から10月4日(日)までオンライン配信で開催されたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020。国際コンペティションのグランプリは、マリア・セーダル監督のノルウェー・スウェーデン合作映画「願い」、SKIPシティアワードには、串田壮史監督の「写真の女」が選ばれた。

末期ガンを宣告された女性の苦悩

「願い」は、2012年に末期ガンを宣告されたマリア・セーダル監督が、自身の体験をもとに描いた人間ドラマだ。

ダンスの振り付け師であるアンニャが、末期の脳腫瘍を宣告される。死の恐怖に怯えながらも、子供たちには悟られまいと、必死に感情を抑えるアンニャ。

夫のトーマスとは、20年の事実婚生活で、一度も真正面から向き合うことがなく、関係は冷えかけていた。しかし、今や、不安や怯えを見せられる相手はトーマスしかいない。

映画は、そんなアンニャの闘病を、12月23日から1月2日までの11日間にわたり、時系列どおりに追っていく。アンニャはいかなる運命をたどるのか。トーマスとの関係はどうなるのか――。

見る者は、先の読めないドラマをアンニャとともに体験し、生きることの意味や人生の価値について、深く考えさせられるはずだ。

背景となるクリスマスの華やかな雰囲気が、ヒロインの苦悩をいっそう際立たせていて効果的である。

主演のアンドレア・ブライン・フーヴィグは、演劇、映画、テレビなどで活躍する有名女優。また、夫トーマス役のステラン・スカルスガルドは、ハリウッド映画への出演も多い、スウェーデンの代表的な俳優。二人の競演にも注目したい。

カマキリを飼う男と自撮りする女

「写真の女」は、写真館を営む寡黙な男と、自撮り写真をSNSにアップし「いいね」の数を稼ぐ女との、風変わりなラブストーリー。

主人公の械(かい)は、写真館で記念撮影やレタッチ(修正)の仕事をこなす日々を送っていた。ある日、趣味の昆虫撮影で訪れた森の中で、体にケガをした女性・キョウコと出会う。

械は、キョウコの写真を撮り、鮮やかな手つきで体の傷を修正する。礼金を受け取らず、会話にも応じない械だったが、キョウコに興味がないわけではない。女性に慣れていないのだ。

そんな械をキョウコは強引に外食へと連れ出す。そして、二人の距離はしだいに縮まり、ついに二人は男女の関係に。

人付き合いが苦手で、触れ合うものはペットのカマキリだけ。そんな男が、しなやかな肉体を持つセクシーな女に惹かれていく。

二人の関係をカマキリのオスとメスになぞらえた映像が官能的。シャッター音とフラッシュ光が炸裂するクライマックスは圧巻だ。

主演の二人を演じるのは、永井秀樹と大滝樹。平田オリザ主宰の青年団に所属し、海外公演も経験した永井の圧倒的な存在感と、バレエダンサーとして20年以上のキャリアを持つ大滝とのアンサンブルが絶妙である。

願い

2019、ノルウェー/スウェーデン

監督:マリア・セーダル
出演:アンドレア・ブライン・フーヴィグ、ステラン・スカルスガルド

写真の女

2020、日本

監督:串田壮史
出演:永井秀樹、大滝樹、猪股俊明、鯉沼トキ

公式サイト:https://www.skipcity-dcf.jp

コピーライト:©Manuel Claro(「願い)、©ピラミッドフィルム(「写真の女」)

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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