富山県のローカル局が、市議による政務活動費の不正受給をスクープ。議員14人がドミノ辞職に追い込まれた。

ジャーナリストの本分

2016年8月.富山県のローカル局「チューリップテレビ」が、自民党会派の富山市議による政務活動費の不正受給をスクープ。半年間で実に14人もの議員が辞職するという、前代未聞の事態に発展した。

このスクープ報道は、2017年度の日本記者クラブ賞、ギャラクシー賞、菊池寛賞などに輝き、一躍チューリップテレビの名を高からしめた。

本作は、その後の4年間を含め、この一大スキャンダルの全貌を総ざらいしたドキュメンタリーだ。

映画は、当時、チューリップテレビの報道記者だった砂沢智史、ニュースキャスターだった五百旗頭(いおきべ)幸男、そして警察・司法記者だった安倍太郎らが、疑惑の議員たちを追及し、屈服させていくプロセスを追って行く。

不正の証拠を突き付け、関係者の証言も取ったうえで、質問を浴びせ、ついには事実を認めさせる砂沢たち。

ごまかし通そうと思っていた議員たちが、動揺し、視線を宙に漂わせ始める。まるで敏腕刑事にアリバイを破られ、窮地に追い込まれた犯人のようだ。

不正の中核にいたのが、富山市議会のドンと呼ばれる中川市議だ。チューリップテレビで自身の疑惑が報道された後、一時失踪した中川が、やつれた様子で現れるシーンがすごい。その後、深々と首を垂れて謝罪した中川は、議員を辞職する。「遊ぶ金がほしかった」という告白が生々しい。

ことの始まりは、市議会の自民党会派による、議員報酬の引き上げ強行である。値上げの根拠が示されず、十分な議論もなく、引き上げが決議されたことに疑問をいだいたチューリップテレビが、市議会の事務局に対し、政務活動費支出伝票の開示を請求したのだ。

9700枚にも及ぶ領収証の山を精査し、不審なものをチェックしていく。こうして、次々と不正が発覚。第二、第三の中川が見つかり、謝罪、辞職へと追い込まれていく。

議員報酬値上げを議決する自民党会派に「恥を知れ」と叫んだ傍聴者に向かって、「退場させますよ」と凄んでいた市田議長も辞職する。

「申し訳ありませんでした」。並んで頭を下げる。土下座する。そんな映像が続々と映し出される。ペコリ、ペコリと謝罪ドミノ、そして辞職ドミノ。

その後、富山市議会は政務活動費の使途について全国一厳しい条例を制定。クリーンな議会へと生まれ変わった、と言いたいところだが、現実はそう甘くないようだ。不正発覚後も辞職せず、居座る議員も少なくないと言う。

とは言え、変革への道筋を付けたことは間違いない。砂沢、五百旗頭、安倍らの活躍がなければ、富山市議会の腐敗はさらに進んでいたことだろう。

(「チューリップテレビ」という地方メディアの)報道が、(市議会という)権力の不正を暴く。本来これは特別なことではなく、権力を監視し、批判することは、ジャーナリズムの本分なはずだ。

しかし、その本来の役割が日本のメディア、特に大手メディアで果たされていない。だから、チューリップテレビの報道が快挙と映るのだ。

森達也監督の「i―新聞記者ドキュメント―」(2019)に登場した望月衣塑子のようなジャーナリストは、残念ながらきわめて少ない。

ほとんどの記者は、権力を監視するどころか、権力に忖度し、権力にとって都合のよい事実を垂れ流しているだけだ。それは報道ではなく、広報である。

組織の論理に逆らえないのか。そもそもジャーナリズム精神に欠けるのか。いずれであるにせよ、ぜひとも「はりぼて」を見て、ジャーナリストの原点を再確認してほしいものである。

『はりぼて』(2020、日本)

監督:五百旗頭幸男/砂沢智史

2020年8月16日(日)より、ユーロスペース他全国ロードショー。

公式サイト:https://haribote.ayapro.ne.jp/

コピーライト:© チューリップテレビ