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SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019 特集上映「新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争」

2019年7月31日
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019 特集上映「新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争」
三池崇史監督の劇場長編デビュー作にして、椎名桔平の初主演作。今の日本では作れない、ヤバさ満点のクライム・アクションだ。

狭いターゲットに向けてぶつけた

7月13日(土)から21日(日)まで開催されたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019。特集上映「トップランナーたちの原点」では、本映画祭の国際コンペティション部門で審査委員長を務める三池崇史監督の劇場長編デビュー作「新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争」が上映された。

終映後には、三池監督と、同作のプロデューサーで、本映画祭ディレクターを務める土川勉、そして主演俳優の椎名桔平が登壇し、トークショーを行った。

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019 特集上映「新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争」

「新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争」は1995年公開作。東京では新宿シネパトスで2週間のみ上映され、その後DVDは発売されているが、スクリーンで見る機会はほとんどなかった。今回は公開時と同じフィルム上映ということもあり、映画ファンにとって貴重な鑑賞機会となった。

映画の主な舞台は、新宿の歌舞伎町。悪徳と暴力が蔓延るこの街で、中国マフィア、日本のヤクザ、警察による三つ巴のバトルが、驚愕のバイオレンス満載で展開される。

主人公は、椎名桔平扮する新宿署の刑事・桐谷。警官刺殺事件を捜査中、弁護士を目指しているはずの弟が、中国マフィアに関わっていることを知り、弟を奪還すべく、中国マフィアのボスと熾烈な戦いを繰り広げる。昨今の日本映画には見られない、手加減なしの暴力描写に圧倒される、クライム・アクション映画の傑作だ。

三池監督にとって劇場第一作となった本作は、椎名桔平にとっての初主演作でもある。ともに、本作をステップに映画界の最前線に躍り出ようと、野心を燃えたぎらせていた時期だったかもしれない。

「久しぶりに見た。すごい熱を感じた。何の熱だったんだろう。面白いものを撮りたいというエネルギーだったかもしれない」(三池)

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「映画を撮った24年前、31歳だった。昨日DVDを見たが、覚えているセリフもあった。台湾にロケしたことも思い出した。新宿で走ったのは朝方。走り終わってオエッて言ってるが、本当に吐きそうだった(笑)。何度も走らされた」(椎名)。

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ザラザラしたフィルムの手ざわりを通して、当時の新宿の熱気、演者のエネルギーが伝わってくる。

「フィルムのいいところは劣化していくところ。以前『中国の鳥人』(98)を撮ったとき、5年ほど世界を巡った後、台湾公開時に呼ばれて行って見たら、ボロボロになっていた。1本のフィルムが世界中で頑張ってきたんだなと思った。傷つきながら踏ん張っている自分自身の姿が重なって見えた」(三池)

傷んだフィルムの中で、椎名桔平のエネルギーが炸裂している。

「それにしても椎名桔平はカッコよかった」(同)。

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「カッコよかった。あの役はタフなアクションが多い。体力的に耐えられることが条件だった。車を追いかけてあれだけ走れる俳優はいない。しかも品のある芝居をする。そこが決め手になった」(土川)

「エッジが立っていた。やべえな、この男。というのでは、当時ナンバーワン。ツンツンでしたよ」(三池)

ヤバい人間がヤバいまま、そこにいられるのが、当時の映画界だったのだ。監督にもスタッフにも、ヤバい人たちがあふれていた。

「単に娯楽作を作って、観客動員数を上げるとか、視聴率をとるとかいうのとは違う世界。たくさんの人に支持してもらえるものより、“こんなの、最近ないよね”って言ってもらえるように、狭いターゲットに向けてぶつける。狭いターゲットって、実は自分たちのことだったりするんだけどね」(三池)

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そういう映画作りがなかなかできなくなっているのが、今の日本だ。

「日本の映画界には閉塞感が漂っている。その代わり、Netflixなどには自由がある。リミットなく何でもできる。外国映画にも自由がある。日本映画がまた昔のような自由を散り戻したときには、また三池監督と一緒に面白い作品を作りたい」(椎名)

エッジの利いた本物のアクション映画。最強のコンビでぜひもう一度見たいものだ。

新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争

1995、日本

監督:三池崇史

出演:椎名桔平、田口トモロヲ、大杉漣、平泉成、柳愛里

公式サイト:http://www.skipcity-dcf.jp/

コピーライト:© 1995 KADOKAWA

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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