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フランス映画祭2019 横浜  「男と女」クロード・ルルーシュ来日

2019年6月19日
「男と女Ⅲ 人生最良の日々(仮)」、「アイディアル・パレス シュヴァルの理想宮(仮)」、「ウルフズ・コール」など、注目作がズラリ。

1993年から毎年開催されているフランス映画祭が、今年も昨年に引き続き横浜で幕を開ける。前回は「顔たち、ところどころ」、「二重螺旋の恋人」、「グッバイ・ゴダール!」などが、後に一般公開され、話題を呼んだが、今回も今年から来年にかけて公開されるはずの作品がズラリ。エスプリあふれるフランス映画の新作を、いち早く楽しむ絶好の機会だ。

オープニングセレモニーには、団長のクロード・ルルーシュと、フェスティバル・ミューズの中谷美紀、「男と女Ⅲ 人生最良の日々(仮)」上映前のフランシス・レイ追悼イベントには、岸惠子が登壇。こちらもファンには見逃せない。

「男と女Ⅲ 人生最良の日々(仮)」

「男と女」で知られる巨匠、クロード・ルルーシュ。その新作で、カンヌ国際映画祭に出品した「男と女Ⅲ 人生最良の日々」が特別上映される。

「男と女 Ⅱ」(86)に続くシリーズ三作目にして、おそらく最終作。一作目からは53年もの歳月が経っており、認知症となったジャン=ルイ(ジャン=ルイ・トランティニャン)は、介護施設で暮らしているという設定だ。年老いたとはいえ、女好きは相変わらず。介護士の女性を口説きまくる姿は、往年のプレイボーイの面目躍如。

そんなジャン=ルイのもとに、かつて恋人だったアンヌ(アヌーク・エーメ)が訪れる。小さな店を経営していて、矍鑠(かくしゃく)たる佇まいのアンヌ。女の色香がまだ残る。

アンヌを見て、記憶を取り戻したかと思うと、すぐに忘れ、しばらくすると、また思い出すジャン=ルイ。何度も重ねられる面会。デートの約束。

映画は、「男と女」の名場面を回想シーンとして組み込みながら、いまだに愛し合う二人の男と女を、慈しむような眼差しで追って行く。アンヌが髪をかき上げる仕草にジャン=ルイが反応する瞬間など、思わず胸が熱くなるシーンが全編にあふれる。53年前の「男と女」、その色褪せぬ輝きを、改めて思い知らせてくれる一作である。

「アイディアル・パレス シュヴァルの理想宮(仮)」

「アイディアル・パレス シュヴァルの理想宮(仮)」は、郵便配達夫のシュヴァルが、愛娘のために、拾い集めた石を積み重ねて、“おとぎの国の宮殿を”築いていく過程を描いた、実話に基づく作品。

芸術家でも建築家でもない、無名の男が近所の人々から奇異な目で見られながらも、コツコツと宮殿づくりに励む様子は求道者のようでもあり、一種の狂人のようでもある。

無口で不愛想。だが、娘や妻を心から愛している。シュールレアリストのブルトンも絶賛した、宮殿の造型美も素晴らしいが、シュヴァルと家族との愛の交流が感動的だ。チャン・イーモウ監督の「初恋のきた道」がそうであったように、途中から涙が止まらなくなる、いわゆる“泣ける映画”でもある。

「ウルフズ・コール」

「ウルフズ・コール」は、フランス映画には珍しい潜水艦を舞台にした近未来SF映画だ。並外れた聴覚を持つ原子力潜水艦の分析官が、シリアでの潜航任務中、それまで聴いたことのないソナー音をキャッチ。だが、発信源を特定できず、危機を招く。

任務終了後、分析官は、密かにソナー音の解析に挑戦。しかし、結果が出せないまま、敵艦から核ミサイルが発射されてしまう。

潜水艦VS潜水艦の魚雷戦が、迫力ある映像と音響で描かれる。これまでの潜水艦ものの中でも、屈指のリアリティで、見る者は“生か死か”の極限状態が疑似体験できる。

このほか、中年男たちがアーティスティック(シンクロナイズド)スイミングに挑む「シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢」、フランスに帰化しようというイスラエル人男性の奮闘記「シノニムズ」など、全16作品を上映。

男と女Ⅲ 人生最良の日々(仮)

2019
監督:クロード・ルルーシュ
出演:アヌーク・エーメ、ジャン=ルイ・トランティニャン、スアド・アミドゥ

© 2019 – Davis Films – Les Films 13

アイディアル・パレス シュヴァルの理想宮(仮)

2018

監督:ニルス・タヴェルニエ
出演:ジャック・ガンブラン、レティシア・カスタ、ベルナール・ル・コク

© 2017 Fechner Films – Fechner BE – SND – Groupe M6 – FINACCURATE – Auvergne-Rhône-Alpes Cinéma

ウルフズ・コール

2019

監督:アントナン・ボードリー
出演:フランソワ・シヴィル、オマール・シー、マチュー・カソヴィッツ、レダ・カテブ

© 2019 – PATHE FILMS – TRESOR FILMS – CHI-FOU-MI PRODUCTIONS – LES PRODUCTIONS JOUROR – JOUROR


開催期間:2019年6月20日(木)~6月23日(日)
会場:横浜みなとみらいホール、イオンシネマみなとみらい他

公式サイト:http://www.unifrance.jp/festival/2019/

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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