栄光に包まれた歴史の裏に、ドラッグと酒に溺れた暗黒時代もあった。ギターの神様。その光と影に迫る音楽ドキュメンタリー。

スーパーギタリストの光と影

ロック界のカリスマ、エリック・クラプトン。ビートルズやローロング・ストーンズなどと同じく、活動を開始したのは60年代初期のこと。

ロック文化が爛熟期を迎えた60年代後半には、ジェフ・ベック、ジミ・ヘンドリックスとともに、スーパーギタリストとして、押しも押されもせぬ地位を確立。“ギターの神様”としてロック・シーンに君臨した。

その後、さまざまなバンドに属した後、ソロプレイヤーとして活躍。来日は20回以上にも及ぶ。日本で最も人気のあるアーティストの一人でもある。

本作は、そんなクラプトンの半生を、本人や関係者のインタビュー、およびアーカイヴ映像によって振り返ったドキュメンタリー映画だ。

前半は、クラプトンの音楽キャリアに焦点が当てられている。ヤードバーズ、ブルースブレイカーズ、クリーム、ブラインド・フェイス、デレク・アンド・ザ・ドミノス。所属したバンドの中でも、別格の輝きを示したのがクリームだ。

本作では、サンフランシスコのフィルモアで演奏された「いやな奴(Toad)」のライヴ映像が紹介される。クラプトン主導の曲ではなく、あえてジンジャー・ベイカーのドラムソロを延々と映し出して見せるあたりに、クリームに対するリリ・フィニー・ザナック監督の只ならぬ思い入れが窺える。

ジミヘンやベックには実現できなかった史上最高のスーパーグループ、クリーム。最強のベーシスト、最強のドラマーと競い合い、刺激し合うことにより、クラプトンは単なるアクロバティックなプレーを超え、官能的かつ夢幻的な独特のサウンドを生み出すことができたのだろう。

2005年には、68年に解散コンサートを行ったロイヤル・アルバート・ホールで再結成ライヴを決行。全盛期を彷彿させる迫力の演奏で聴衆を驚かせた。

一方、本作は、一人の人間としてのクラプトンにもスポットを当てている。

幼少期の孤独。派手な女性関係。そして70年代のヘロイン中毒、80年代のアルコール依存症。

親友であるジョージ・ハリスンの妻、パティ・ボイドを略奪する。ステージ上で酒に酔い、観客に毒づく。温厚そうな外見からは想像できないようなクラプトンのダークな側面だ。

酒浸りになりミュージシャンとして立ち行かない状況にまで落ち込んだクラプトンを、さらに愛息の事故死という悲劇が襲う。ところが、皮肉にも、息子の死がクラプトンの目を覚ます。

エレキギターを封印し、アコースティック・ギターで弾き語った名曲「ティアーズ・イン・ヘヴン」。息子に捧げたこの曲は大ヒット。グラミー賞にも輝き、クラプトンは見事にカムバックを果たした。

そして、いま、再びエレキギターを手に、艶やかなブルースを奏でるクラプトン。波乱万丈の人生をくぐり抜けてきたことで、その華麗な音色には渋みと深みが増し、まさに神のサウンドへと近づいているように思える。

クラプトンのファンはもちろん、ロックを愛するすべての人にとって、必見のフィルムである。

『エリック・クラプトン~12小節の人生~』(2017、イギリス)

監督:リリ・フィニー・ザナック
出演::エリック・クラプトン、B.B.キング、ジョージ・ハリスン、パティ・ボイド、ジミ・ヘンドリックス、ロジャー・ウォーターズ、ボブ・ディラン、ザ・ローリング・ストーンズ、ザ・ビートルズ

2018年11月23日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー。

公式サイト:http://ericclaptonmovie.jp/

コピーライト:© BUSHBRANCH FILMS LTD 2017