第二次世界大戦末期、陸軍中野学校が主導した「秘密戦」。少年たちはゲリラ戦で殺され、住民はマラリア地帯で病死させられた。

沖縄戦の悪夢は再来する

第二次世界大戦末期。すでに勝敗の趨勢が決している中、日本軍と米軍との熾烈な戦闘が、沖縄を舞台に繰り広げられた。日本側の死者は18万人超。その半数が民間人だった。

よく知られたことだが、民間人の命を奪ったのは、米軍の攻撃だけではない。日本兵による銃殺、危険地帯への誘導など、味方であるはずの日本軍が、多くの民間人を死に追いやった。

なぜ、そんなことが起きたのか。本作「沖縄スパイ戦史」は、その答えを、陸軍中野学校の主導した「秘密戦」に見出す。

一例として紹介されるのが、10代半ばの少年たちで組織されたゲリラ部隊「護郷隊」だ。中野学校から赴任した青年将校たちから、ゲリラ戦のノウハウを仕込まれた少年兵たちは、戦車への特攻、斬り込みなど、無謀な攻撃に駆り立てられ、あたら若い命を散らしていった。

中には、スパイの嫌疑をかけられ処刑された者、負傷や病気で足手まといになるからと銃殺された者もいた。仲間の少年兵が命令されて処刑するケースもあった。最終的に160人の少年兵が命を絶たれた。

続いてスポットが当てられるのは、沖縄県の南端に位置する波照間島。ここは米軍が上陸せず、戦闘も行われなかった。にもかかわらず、島民の3分の1にあたる500名が命を落とした。

悪性マラリア地帯だった西表島に強制移住させられ、病死したのだ。米軍が上陸すれば、住民が米軍のスパイになるからと、危険な島に閉じ込めたのだ。

強制移住を命じたのは、国民学校の教員として勤務していた中野学校卒業生。温和な教師の顔を豹変させ、軍刀で島民を脅し、移住を迫った。

ここには、住民保護の視点などない。沖縄を守ろうという意志すらない。沖縄はあくまで本土決戦を有利に展開するための捨て石だった。最終的な目的は国体護持。住民はそのために利用されたに過ぎなかった。

「軍隊は敵の殲滅(せんめつ)が役目。住民を守ることは作戦に入っていなかった」。沖縄戦から生還した元参謀の言葉が、戦争の本質を明快に物語っている。
敵を討つためには、住民の命を犠牲にすることも厭わない。それが、日本軍の戦闘方針だったのだ。

敗戦から73年。日本軍は自衛隊へと生まれ変わった。だが、はたしてその体質まで一新されたのか。

沖縄戦の真相を明かすにとどまらず、現在の沖縄が置かれている状況や自衛隊の行動規範にまで踏み込むことで、沖縄問題に新たな光を当てたこと。本作の大きな意義がここにある。

陸上自衛隊の最高法規である「野外令」や「自衛隊法」。その記述を見る限り、悲観的にならざるを得ない。

「自衛隊は国民を守るためではなく、国を守るためにある」。元自衛隊員の言葉である。国体護持を旨とした日本軍とどこが違うのか。

2016年から進められている南西諸島の自衛隊増強、ミサイル基地配備――。万一、有事勃発となれば、沖縄戦の悪夢はきっと蘇る。

『沖縄スパイ戦史』(2018、日本)

監督:三上智恵、大矢英代

2018年7月21日(土)より、沖縄・桜坂劇場にて先行公開中。7月28日(土)より東京・ポレポレ東中野他全国順次公開。

公式サイト:http://www.spy-senshi.com/

コピーライト:(c)2018『沖縄スパイ戦史』製作委員会