「僕、未来が見えるんです」
高校教師の野田柚季が車に乗っていると、生徒の一人である村木蒼が走ってきて、必死の形相で窓ガラスを叩き始めた。「すぐに降りて」と叫んでいる。
尋常ならぬ逼迫(ひっぱく)感に気圧(けお)され、車から出た瞬間だった。隕石が車の屋根を突き破り、柚季が座っていたシートに穴を開けていた。危なかった。死ぬところだった。

「僕、未来が見えるんです」。柚季が隕石に当たって死ぬ未来が見えたので、慌ててやってきたのだ。
勤務先の高校はまもなく再開発で壊される。柚季の最後の仕事は、単位不足の3年生二人に日本史の補講をすること。蒼はそのうちの一人だった。

一時限目に出席したのは蒼のみ。一対一で始まった柚季の授業は破天荒なものだった。平安時代末期を舞台に、武将になりきった柚季が、若武者役の蒼と斬り結び、その首を討ち取る。柚季のあまりの気迫に蒼は圧倒され、遂には気絶してしまう。

柚季が蒼の上に覆い被さり、超接近するショットが生々しい。その刹那、柚季は少年に迫る年上の女と化しているからだ。純情な蒼が失神するのも無理はない。

こうして映画は、急速に柚季と蒼の距離を縮めていく。だが、互いの思いは同等ではない。柚季はある意味、悪い女である。蒼が未来予知者であることを利用し、一儲けしようなんてことを即座に思いつく打算の女だ。

一方、蒼は最初こそ控えめだが、しだいに柚季への思いが恋愛感情であることを隠さなくなる。柚季は蒼にとってもはや年上の彼女以外の何物でもないのだ。
だから、柚季の思わせぶりな態度、気安くボディタッチする軽さに傷ついたりもする。

そんな二人の関係が息苦しくならないのは、補講の授業にもう一人、俊一という生徒が加わって、トリオを形成するからだ。年上の女性との恋愛経験が豊富な俊一は、親し気な二人を見て「もしかして俺、邪魔?」と気遣うくらいには大人の男である。

互いにクラスの除(の)け者でありながら、性格は対照的な俊一と蒼は友情を育んでいく。そして、柚季との関係にも希望が見えてくる。

爽やかで快活な青春恋愛映画の趣がありながら、決して映画が希望にあふれないのは、蒼の持つ未来予知能力ゆえである。分かってしまう、人の未来。見えてしまう、大切な人の最期。だが、そんな運命論を横目に、柚季も蒼も、今この瞬間の幸せに身を委ねるのである。
みらいしのほこう
2026、日本
監督:羽蚋拓未
出演:安田聖愛、盧礼欧、佐藤和太、近藤美鈴、紫藤楽歩、岩瀬亮、今里真、笠兼三
公開情報: 2026年11月7日 土曜日 より、Kʼs cinema他 全国ロードショー
公式サイト:https://miraishi.com/
コピーライト:© 2026 埼玉県/SKIP シティ彩の国ビジュアルプラザ
配給:トラヴィス

