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映画レビュー「レッド・ツェッペリン:ビカミング」

2025年9月26日
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4人はいかなる経緯で出会い、どのようにして世界の頂点に立ったのか。メンバーが自らの肉声で語る、ツェッペリン誕生と成功の物語。

いま明かされるツェッペリンの真実

1960年代末期、ロックシーンは大きな転換期を迎えていた。クリームの解散。ビートルズの活動停止。ストーンズを脱けたブライアン・ジョーンズの死。ジミ・ヘンドリックスとジャニス・ジョプリンの死…。ロックの一時代が終焉した感があった。

そこに彗星のごとく登場したのが、レッド・ツェッペリンだ。ヤードバーズのギタリストだったジミー・ペイジが、かねて追い求めていたサウンドをこの新バンドで実現。ロックの新しい地平を切り拓き、再びロックシーンを活性化した。

本作は、メンバーの4人がいかなる経緯で出会い、どのようにして劇的な成功を収めたかを、メンバー自身が語った貴重なドキュメンタリーである。

インタビューが行われたのは2018年。ジョン・ボーナムはすでに故人だ。しかし、ボンゾ抜きでツェッペリンは語れない。本作を監督したバーナード・マクマホンは必死で奔走し、インタビュー音源を発掘。かくして、メンバー全員が揃っての証言ドキュメンタリーが誕生したわけである。

ジミー・ペイジはキング・オブ・スキッフルと称されたロニー・ドネガンに憧れ、ギタリストの道を歩み始めた。ロバート・プラントはリトル・リチャードに衝撃を受け、学業を捨てた。

ジョン・ボーナムはジーン・クルーパに熱狂した。ジョン・ポール・ジョーンズは両親の影響で早くから音楽を学び、聖歌隊で最年少のオルガン奏者となった。

それぞれが、自身の音楽体験とプロミュージシャンへの歩みを語り、スクリーンには若き日の彼らの映像や画像が映し出されていく。

ジョン・ボーナムはまだ髭を生やしておらず、少年っぽい顔がツェッペリン時代とは別人のようだ。早くから結婚したボーナムには安定収入が必要なため、ツェッペリン加入に当初は二の足を踏んだらしいことも明かされる。

最初のリハーサルで成功を確信したペイジは、プロデューサーやレコード会社の介入を嫌い、ファーストアルバムはすべて独力で完成させた。セッションマン時代に学んだ録音のノウハウがここで生きてくる。

セカンドアルバムではシングルカットを阻止するため、凝りに凝った曲作りにチャレンジ。オープニングの「胸いっぱいの愛を」ではテルミンの使用やテープの逆回転などで、アヴァンギャルドなサウンドを創造している。これ以降も、ツェッペリンは妥協なき音楽づくりを続けていく。

デビュー以来、ひたすらツェッペリンの音楽に身を委ね、酔いしれてきたが、本作で披露されるさまざまなエピソードと、合間に挿まれる4Kライヴ映像にふれることで、改めて彼らの音楽の幅広さと奥深さ、そして革新性を実感することができた。

映画レビュー「レッド・ツェッペリン:ビカミング」

レッド・ツェッペリン:ビカミング

2025、イギリス/アメリカ

監督:バーナード・マクマホン

公開情報:2025年9月26日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほかIMAX®同時公開

公式サイト:https://zep-movie.com/

コピーライト:©2025 PARADISE PICTURES LTD.

配給:ポニーキャニオン

 

 

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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