外国映画

映画レビュー「ザ・フー キッズ・アー・オールライト」

2025年9月25日
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圧倒的なライヴ・パフォーマンスで、ロック界を席巻した4人組。その黄金期を記録した伝説のドキュメンタリーが、最高音質で甦る。

ロックの真髄ここにあり

ビートルズ、ストーンズと並び、英国の三大ロックバンドの一つに数えられるザ・フー。本作は、その最初期からキース・ムーンが急逝する直前までの活動を収めたロック・ドキュメンタリーだ。

79年に完成した本作は、アルバム「四重人格」をベースにした映画「さらば青春の光」(79)と同年に英国で公開されたが、日本では未公開のまま幻の作品となっていた。ロックファンにとっては今回が待望の初公開となる。

収録されているのは、「モンタレー・ポップ・フェスティバル」や「ウッドストック」など、バンドの名を高からしめた歴史的パフォーマンスをはじめ、テレビの音楽番組やバラエティでのライヴ演奏、またプロモーション・フィルムなど多岐にわたる。

「ウッドストック」映画版には収録されなかった「ピンボールの魔術師」や「スパークス」、キース・ムーンにとって最後の演奏となった「無法の世界」など、貴重な映像も多数収められ、その凄まじいまでの演奏力をとことん堪能させてくれる。「ロックン・ロール・サーカス」で主役のストーンズを食ってしまった(!)神がかりの名演も見逃せない。

マイクぶん回しのロジャー・ダルトリー、“ウィンドミル奏法”のピート・タウンゼント、とにかく破天荒なキース・ムーン、直立不動のThe Oxことジョン・エントウィッスル。

それぞれが、他の追随を許さない天才ミュージシャンでありつつ、自己演出の達人でもある。ロックは聴覚芸術であり視覚芸術でもあることを、ほとんど無意識に理解し、実践した先駆的アーティストだった。

4人のうち誰が欠けても存続できない、パーフェクトなグループでもあった。本作の完成以降、キース・ムーンの後釜にケニー・ジョーンズを迎えたが、結局うまく行かなかったことは周知のとおり。そして2002年にはロック史上最強のベーシストたるジョン・エントウィッスルが逝ってしまった。

バンドは終わったが、ザ・フーの音楽は永久に不滅だ。“最後”まで完璧なロックバンドであり続けたザ・フーの、まさに黄金期のカッコよさを本作でぜひ味わい尽くしてほしい。HDレストア版での公開。迫力の音質で甦ったサウンド、とりわけエントウィッスルのベースに体中が熱くなる。

ザ・フー キッズ・アー・オールライト

1979、イギリス

監督:ジェフ・スタイン

公開情報: 2025年9月26日 金曜日 より、角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA、池袋HUMAXシネマズ、吉祥寺UPLINK他 全国ロードショー

公式サイト:http://who.onlyhearts.co.jp/

コピーライト:© Who Group Ltd

配給:オンリー・ハーツ


文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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