日本映画

映画レビュー「私はワタシ〜over the rainbow〜」

2018年12月21日
日本人の13人に1人はLGBT。彼らの悩みや困難は、決して他人事ではないはず。その切実な言葉に耳を傾けよう。

東ちづるがLGBT50人にインタビュー

日本人の13人に1人はLGBTなのだそうだ。学校のクラス編成が40人だとすると、約3人がLGBTということになる。これは左利きやAB型(血液型)とほぼ同じ割合である。

昔はそんなにいなかった? 違う。気づかなかっただけだ。今のように、カミングアウトできる状況ではなかったので、黙っていた。隠していた。だから知られなかっただけだ。マイノリティは存在しないことになっていたのだ。

左利きだって同じだった。昭和30~40年代は、クラスに1人か2人しかいなかったと思う。本来は左利きなのに、幼いころ、右利きに矯正されてしまったのだ。

左利きは悪いこととされていた。「お箸を持つ手はどっち?」。教師の無神経な問いかけに、どれだけ多くの左利き児童が心を痛めたことだろう。

「私はワタシ〜over the rainbow〜」は、同性のパートナーと暮らすカップル、トランスジェンダー、ドラァグクイーンなど、50人のLGBD当事者へのインタビューで構成したドキュメンタリー映画である。インタビュアーは女優の東ちづる。

はるな愛、ピーターなどの著名人も含め、さまざまな年齢層の人々が登場する。
ゲイをネタにした仲間の冗談を聞きながら、自分はゲイだと言い出せず、密かに傷ついた経験を語る人。トランスジェンダーは自殺率が高いから生命保険に加入できないと嘆く人。両親から否定されて育ち、いまだに自分を肯定できないと語る人……。

しかし、時代は確実に前進している。テレビをつければ、一目でわかるドラァグクイーンのタレントが国民的人気を博しているし、バイセクシャルを公言するお笑い芸人も、多くのバラエティ番組で活躍している。

もちろん、彼らが堂々とカミングアウトし、胸を張れるのは、際立った才能を持つがゆえという面も大きい。大多数のLGBTは、いまだ仮面で素顔を隠しながら生活しているのに違いない。

かつて60年代の公民権運動により人種差別の壁が低くなり、ウーマンリブでは女性差別が緩和された。そして本作のインタビューでも触れられているように、69年のストーンウォールの運動をきっかけに、同性愛者に対する人権意識も高まっていった。

だが、まだまだ道半ばである。これも、インタビューで語られたことだが、LGBTの問題は、身障者の問題と同じ。重要なのは、受け入れるための環境づくりである。身障者にとってのスロープに相当するものが必要なのだ。

環境づくりの前提となるのは、差別心を撤廃することだろう。先に述べた左利きもそうだが、人種、国籍、病気、障害など、あらゆるマイノリティに対し、偏見を捨て去ることが肝心だ。

たとえLGBTの問題を解決したとしても、それだけでは対症療法に過ぎない。社会全体に巣食うマイノリティへの差別構造を是正しない限り、差別は根治しないのだ。

国籍や民族など、居場所が変われば、誰でもマイノリティになり得る。マイノリティは相対的概念でしかない。その意味でLGBTというマイノリティの問題は、決して他人事ではないのだ。

『私はワタシ〜over the rainbow〜』(2017、日本)

監督:増田玄樹
出演:長谷川博史(HIV陽性者ネットワーク・ジャンプラス理事)、増原裕子(LGBTアクティビスト)、ピーター(タレント、俳優)、はるな愛(タレント)、レスリー・キー(フォトグラファー)、杉山文野(渋谷区男女平等・多様性社会推進会議委員)、松中権(グッド・エイジング・エールズ代表)

2018年12月22日(土)より、ポレポレ東中野で1週間限定ロードショー。

期間中、連日トークイベントあり。
22日(土)小川チガ・小原たかき
23日(日)三ツ矢雄二
24日(月)名取寛人(バレエ「瀕死の白鳥」披露)
25日(火)松中権・モンキー高野(手話通訳:らーちゃん)
26日(水)杉山文野・増田玄樹監督
27日(木)畑野とまと・星野俊樹
28日(金)長谷川博史・山縣真矢
※ゲストについては、急遽変更となる可能性あり。

公式サイト:https://warmblue2018.wixsite.com/overtherainbow

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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