究極のパワハラ!?
バルセロナからNYの空港に降り立ったカップル、エレナとディエゴ。二人は事実婚の身分でNYに入国し、乗り継ぎで目的地のフロリダに向かうはずだった。だが、入国審査で引っかかってしまう。
指紋のチェックやボディチェックなど面倒なルーティーンは米国流で仕方ないとして、その後もまるで犯罪容疑者に対する尋問のようなやり取りが続く。やがて女性審査官が現われ、二人を追いつめていく。まずディエゴ、次にエレナ。
執拗な質問は通常の範囲を逸脱し、プライベートな内容に踏み込んでいく。狭い密室に一対一の二人きり。しかも相手は許認可権を握っている。逆らうのは得策ではない。しかたなく質問に答え続けるディエゴは、エレナにも明かしていなかった過去の秘密まで告白させられてしまう。
一方、ダンス講師をしていることを知られたエレナは、新たに登場した男性審査官に目の前で踊れとまで言われる。ここまでくると、もうブラックコメディ。次は、裸になれとでも言い出すのではないか。そんな勢いである。
人権も何もない。審査官の好奇心と加虐趣味は、プライバシーを暴き、良好な人間関係まで破壊しようとする。恐ろしいのは、それが合法的手続きという枠組みの中で行われるため、やられた方には対抗手段がないことだ。ある意味、究極のパワハラと言えるかもしれない。
共同監督のアレハンドロ・ロハスがベネズエラからスペインに移住したときの実体験に基づく物語だそうだ。全くのフィクションとは言えないところが怖い。
4人の登場人物それぞれの困惑する顔、脅迫する顔、そのクロースアップを次々と重ねていくカット割りがスリリング。最後のオチまで先の読めない作劇術に舌を巻く。
入国審査
2023、スペイン
監督:アレハンドロ・ロハス、フアン・セバスチャン・バスケス
出演:アルベルト・アンマン、ブルーナ・クッシ、ベン・テンプル、ローラ・ゴメス
公開情報: 2025年8月1日 金曜日 より、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町他 全国ロードショー
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/uponentry/
コピーライト:© 2022 ZABRISKIE FILMS SL, BASQUE FILM SERVICES SL, SYGNATIA SL, UPON ENTRY AIE
配給:松竹