日本映画

映画レビュー「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」

2024年3月14日
1983年、若松孝二が名古屋に設立した映画館“シネマスコーレ”。常連となった井上淳一は、映画監督を志し若松プロの門を叩く。

全編にあふれる映画愛

1983年2月。映画監督の若松孝二は名古屋にミニシアターを立ちあげる。名付けてシネマスコーレ。スコーレとは学校という意味のラテン語だ。

家庭用ビデオの普及で、映画がいよいよ立ち行かなくなってきた時代。若松は自作を上映する場が欲しかった。だが、東京や大阪だとコストがかかる。それで名古屋を選んだのだ。

支配人には、文芸坐を辞めてビデオカメラのセールスをしていた木全純治を抜擢。破天荒で衝動的な若松に対し、冷静で温厚な木全は、名画座路線とピンク映画を組み合わせるなど、プログラムを工夫しながら、何とか経済的苦境を脱していく。

そんなシネマスコーレに、若者たちが集まってくる。映画監督を志すも、何を撮ったらよいのか分からず、一歩を踏み出しかねている大学生の金本法子。

そして、熱烈な映画マニアで若松の弟子となるも、要領が悪く、失敗ばかりし、自信を失いかける井上淳一。そう、彼こそは本作でメガホンを取った井上淳一監督、その人である。

「止められるか、俺たちを」(2018)では脚本担当だった井上が、続編である本作では脚本・監督を務め、若かりし日の自分自身を主役として登場させているのだ。

開巻しばらくはシネマスコーレを舞台とした若松と木全の物語と見える。だが、やがて井上に焦点が絞られていく。

井上が通っていた予備校・河合塾から依頼されたPR映画を初監督するシーンは、本作のハイライトの一つだ。井上をサポートする若松が前面に立ち、いつのまにか井上から監督の座を奪ってしまう。その一部始終を金本が見ている。その情けなさ、可笑しさ。

若松役の井浦新が今回も絶好調だ。板についた東北訛りと「俺の視界から消えろ」の決め台詞。井浦が登場するだけで画面が引き締まる。と同時に空気が和らぐ。一世一代の当たり役と言ってよいのではなかろうか。

井上淳一の青春物語であり、若松孝二への鎮魂歌でもある。さらにはミニシアターへの応援歌であり、そして時代の貴重な証言でもある。井上監督の映画愛が全編にあふれる作品だ。

あの頼りなかった井上青年が、キャリアを積んで、こんなに面白い映画を作り上げた。天国の若松監督が見たら何と言うだろうか。

青春ジャック 止められるか、俺たちを2

2023、日本

監督:井上淳一

出演:井浦新、東出昌大、芋生悠、杉田雷麟

公開情報: 2024年3月15日 金曜日 より、テアトル新宿他 全国ロードショー

公式サイト:http://www.wakamatsukoji.org/seishunjack/

コピーライト:© 若松プロダクション

配給:若松プロダクション

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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