日本映画

映画レビュー「青春墓場」

2023年7月6日
不条理な暴力にさらされる高校生の絶望。夢を追い求めた男女の恋愛。2つの異なる物語が遭遇し、幸福と残酷が一点に収斂する。

人生は非情で残酷

学校で陰湿かつ執拗な虐めを受けている高校生。同級生の彼女にも、母親にも事実を打ち明けられず、鬱屈した毎日を送っている。奴隷のように扱われ、金を巻き上げられる、屈辱の日々だ。

母親は直感的に息子の苦境を察知。パート先の中華料理屋で働く男に話し、相談に乗ってもらおうとするが、息子は頑なに口を閉ざす。

事態が一向に好転しないまま、何年も行方不明だった父親が帰宅。母親に暴力を振るい始める。高校生はますます追い込まれる。そして、ある日突然、姿をくらます――。

学校での虐待、そして家庭では暴力。さらには中華料理屋の男が起こす暴力沙汰。平凡で大人しい高校生を、バイオレンスの嵐が直撃し、窮地に追い込み、その精神をボロボロにしていく。

弱いものを弄び、愉悦にひたる、加害者たちの冷酷さが、見る者の神経を逆撫でる。気まぐれな暴力に組み敷かれる高校生が、感情を封印することで、からくも正気を保つ。だが、やがて狂気が静かに牙をむく。

青春真っ盛り。恋人だっている。なのに、何故、人生はかくも非情で残酷なのか。

高校生に焦点を当てた前半の物語のゾッとする結末に呆然とする間もなく、後半が始まる。高校生と母親の住むアパートの隣室に引っ越してくるカップルの物語である。

俳優を夢見る劇団員の女性と、漫画家志望の青年。合コンで知り合い、酒の勢いで結ばれた二人は、女性が押しかける形で同棲を始める。愛嬌はあるが女性的なしとやかさに欠ける女性との同居に、最初は戸惑いを感じていた青年だったが、やがて彼女の天真爛漫さを愛しく感じるようになる。

女性の寝姿を見ながら、二人の関係をコミカルなファンタジー作品として描き上げる青年。そのマンガのコマだけで構成される“ラブシーン”に胸が突かれる。

青年のただ一度の過ちによる関係の破綻。その後の“劇的な”展開による関係の復活と強化。絵に描いたような青春ラブストーリーが進行していく、はずなのだが――。

理不尽な暴力が彼らの人生を破壊する。そして、この結末は、後半が始まる前、すでに観客に予告されてしまっているのだ。奥田庸介のこの大胆な作劇は、人生の幸福と残酷とを一点に収斂させる。驚異的な映画である。

青春墓場

2021、日本

監督:奥田庸介

出演:笠原崇志、古川奈苗、田中惇之、堀内暁子、鈴木たまよ、奥田庸介、呂布カルマ

公開情報: 2023年7月8日 土曜日 より、ユーロスペース他 全国ロードショー

公式サイト:https://seishunhakaba2023.amebaownd.com/

コピーライト:© 映画蛮族

配給:イハフィルムズ

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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