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映画レビュー「デュエル」

2022年4月7日
パリに現れた太陽の女神と月の女神。地上に留まるために必要な魔法の宝石をめぐって、熾烈なバトルを繰り広げる。

太陽の女神VS月の女神

パリに現れた二人の美女。普通の人間に見えるが、実は太陽の女神と月の女神である。地上に留まるには、時別な魔法の宝石が必要だ。そこで彼女たちは、それぞれのルートから宝石の持ち主に接近し、我が物とすべく、争奪戦を繰り広げる――。

と要約してはみたが、この筋書きが浮かび上がるまでには、実は結構な時間がかかる。ヌーヴェルヴァーグの中でも前衛的作風で知られるジャック・リヴェット。そう簡単には種を明かしてくれない。

最初に戸惑うのは、重要人物とそうでない人物との見分けがつかないことだ。ストーリーが動き始めるまでは、登場人物全員をマークしなければならず、ちょっと難儀かもしれない。

だが、第一の事件が起こり、サスペンスが起動すると、徐々に映画は緊迫感を強めていく。人物の相関図も見えてくる。そして、ついに太陽の女神ヴィヴァと月の女神レニが対峙する時が訪れる。

二人の敵であり、宝石の所有者であるピエールが、超能力で鏡を割った瞬間、それが合図であるかのように、ゴージャスな衣装に身を包んだ二人が対面し、徐々に距離を詰めていく。

格式ばったセリフで、声を揃えながら、決闘を宣言し合う、この場面の芝居がかった優美さは、リヴェットの面目躍如たる名シーン。圧巻である。

場面が変わるたびに、衣装も髪形も変え、別人として登場する七変化レニ。つねにステッキを携行し軽やかに媚態を振りまく小悪魔ヴィヴァ。

対照的なヒロイン二人を、ともにリヴェット監督のミューズであるジュリエット・ベルトとビュル・オジエが演じ、圧倒的なオーラを放っている。

ベルト扮するレニとピエールがホテルの廊下で繰り広げる激闘、オジエ扮するヴィヴァとピエールの妹リュシーとの死闘など、後半はバトルシーンの見せ場が続き、意表を突くラストまで目が離せない。

場面の合間にインサートされる月のショット、ホテルのダンスホールや賭博場に漂うデカダンなムード、そしてダンスホールの外へと場面が移っても存在し続けるピアニストの即興演奏。

こういった映像や音の演出は、えも言われぬムードを全編に醸し出し、ロジックを超えた映画的快感を生み出している。

本作は「ジャッ・リヴェット映画祭」で上映される作品の1本。日本での劇場初公開となる。他に「セリーヌとジュリーは舟でゆく」(74)、「ノロワ」(76)日本劇場初公開、「メリー・ゴー・ラウンド」(81)日本劇場初公開、「北の橋」(81)を上映。

デュエル

1976、フランス

監督:ジャック・リヴェット

出演:ジュリエット・ベルト、ビュル・オジエ、ジャン・バビレ

公開情報:「ジャック・リヴェット映画祭」は、2022年4月8日金曜日より4月28日木曜日まで、ヒューマントラストシネマ渋谷で開催。その後、全国各地で開催。

公式サイト:https://jacquesrivette2022.jp/

コピーライト:© 1976 SUNSHINE / INA. Tous droits réservés.

配給:マーメイドフィルム/コピアポア・フィルム

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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