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第33回東京国際映画祭 TOKYOプレミア2020「最後の入浴」

2020年11月18日
40歳の修道女と15歳の甥との危うい関係を描いた心理ドラマ。TOKYOプレミア2020の1本として上映された。

修道女と甥との危うい関係

修道女のジョゼフィナは、父親の訃報を受け、久々に里帰りする。彼女には15歳の息子を持つ妹がいるが、身持ちが悪く、長く家に戻っていない。代わりに息子の面倒を見ていたのが、ジョゼフィナの父親だった。

突然、養育者を失ってしまった甥。悩んだあげく、ジョゼフィナは彼の世話を引き受けることになる。

甥は妹の息子であり、ジョゼフィナは神に仕える41歳の修道女である。甥と伯母。年齢も離れている。何の問題もないはずだった。ところが――。

ジョゼフィナが、黒いズロースを脱ぎ、下半身裸で床に入るシーンがある。暗闇の中、壁にかかった小さな鏡に、彼女の尻が一瞬ぼんやりと映る。エロティックで、暗示的な場面だ。

修道女の衣を脱げば、中身は紛れもない女。そんな女のベッドに甥が甘えて入ってくる。心は少年だが、体はほぼ大人。好奇心もある。

しだいに二人の距離は近づき、やがてジョゼフィナは、眠らせてあったはずの女の本能を目覚めさせていく。

ジョゼフィナが若い頃の写真がある。美人としか言いようがない。派手でもある。なのに、なぜ修道院に入ったのか。理由は一切語られない。ミステリアスである。

ある日、妹が男を連れて現れる。息子に会いたがっている。だが、ジョゼフィナは妹の訪問を甥に伝えない。彼女は甥への執着を強め、その行動は常軌を逸していく。

タガを外したジョゼフィナが、全裸となり、どこにしまってあったか、派手な衣服へと着替え、バーへとくり出すシーン。けばけばしく変身した顔のアップに目が射られる。

修道女であり少年の保護者でもある。この二重の禁忌をあっさり破り、女の本能を全開させるヒロインの姿が、狂おしくも愛おしい。

最後の入浴

2020、ポルトガル/フランス

監督:デイヴィッド・ボヌヴィル

出演:アナベラ・モレイラ、マルティン・カナヴァロ、ミゲル・ギレルメ、マルガリーダ・モレイラ、アンジェロ・トレス

公式サイト:https://2020.tiff-jp.net/ja/

コピーライト:© C.R.I.M./BOCALUPO

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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