外国映画

映画レビュー「プロジェクト・グーテンベルク 贋札王」

2020年2月6日
偽札製造チームにスカウトされた贋作名人の数奇な運命を描く、犯罪アクションサスペンス。チョウ・ユンファの“二丁拳銃”も必見。

チョウ・ユンファが本領発揮

チョウ・ユンファが帰ってきた! そんなファンの叫びが聞こえてきそうである。「男たちの挽歌」シリーズで一世を風靡し、香港ノワールの魅力を世界中に知らしめた張本人、ユンファ。今、またキャリアの原点とも言うべき場所へと戻ってきた。

役柄は“画家”と呼ばれる、偽札製造チームのリーダー。贋作の名人であるレイ・マン(アーロン・クォック)をスカウトし、アメリカの100ドル札偽造という大胆不敵なプロジェクトに着手する。自信家だが、何か闇を抱えているようでもある。ミステリアスな男だ。

映画は、レイ・マンがタイの刑務所から香港警察へと身柄を移され、取り調べを受けるシーンから始まる。行方不明になっている“画家”について話すよう迫られたレイは、自らの数奇な過去について話し始める――。

若い頃、カナダのバンクーバーで絵を学んでいたレイ。今や超一流の画家としてリスペクトされているユン・マン(チャン・ジンチュー)はレイの恋人であり、ともに絵画で身を立てるべく研鑽を積んでいたのだった。

やがてユンは才能が認められ、個展を開くまでになる。だが、レイは名画の贋作は上手いが独創性に欠けるため、誰からも評価されなかった。

ユンの個展には一枚だけレイの絵も展示されたが、ギャラリーを訪れた男にこき下ろされる。頭に血が上ったレイは、男に飛びかかるが、軽くいなされる。この男こそは、偽札製造で裏社会に名を馳せる“画家”その人だった。

後日、“画家”は偽札製造の仕事にレイを誘う。ギャラリーでレイの絵をけなし怒らせたのは、“画家”の演出だったのだろう。“画家”はレイの模写の才能を高く買っていた。

レイは「心を込めれば、偽物は本物に優る」という“画家”の言葉に励まされ、しだいに“画家”に心酔していく。

偽札製造チームには、原版技師、管理担当、輸送担当など、各分野のプロが揃っており、これまでも数々の偽札製造を成功させてきたようだ。

今回も、見事に偽札は完成。次々と大口取引を成立させるが、ミャンマー、タイ、ラオスの3国が接する黄金の三角地帯を支配する“将軍”(ジャック・カオ)との取引に失敗。“画家”チームは、将軍の率いるゲリラ軍団と壮絶なバトルを繰り広げることに。

贋作のプロとして参加していただけ。そんなレイにとっては、思いがけない展開だったろう。しかも、チームのメンバーはいずれも銃器の扱いに慣れており、激烈な銃撃戦を何とかくぐり抜ける。

とりわけ、目を見張る活躍を見せるのが“画家”である。「待ってました」とばかりのガンファイト参戦。二丁拳銃に二丁機関銃。まさにユンファのお家芸が炸裂する。そう、これを見たかったのだ。ファンは、こういうユンファを待っていたのだ。

激戦の中、レイは将軍に囚われていたシウチン(ジョイス・フォン)を救い出し、二人は行動を共にする。全身に大やけどを負っていたシウチンは、手術でユンそっくりに変身。助けてくれたレイを慕うようになる。しかし、レイはユンに未練を抱いていた。

この後、物語は、レイとシウチンの動向を軸に、“画家”と警察との駆け引き、暗闘などが描かれていく。スピーディかつ意表を突く展開が続き、いかなる決着が待っているのか、一歩も先を読ませない。

レイとユンとの関係はどうなるのか。そして“画家”はいずこへと消えたのか。最後の最後に明かされる想定外の事実には、ただ呆然とするばかり。

監督・脚本のフェリックス・チョンは「インファナル・アフェア」シリーズの脚本などで知られる才人。本作でも、すぐれたストーリーテラーとしての才能を遺憾なく発揮している。うーん、贋作か。なるほど。

プロジェクト・グーテンベルク 贋札王

2018、香港/中国

監督:フェリックス・チョン

出演:チョウ・ユンファ、アーロン・クォック、チャン・ジンチュー

公開情報: 2020年2月7日 金曜日 より、新宿武蔵野館他 全国ロードショー

公式サイト:http://www.gansatsuou.com/

コピーライト:© 2018 Bona Entertainment Company Limited

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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