「イージー★ライダー」成功後のデニス・ホッパーが、ホッパー自身を演じる異色のドキュメンタリー。何が虚構で、何が真実なのか。

デニス・ホッパーの虚実に迫る

「イージー★ライダー」(69)を見て、初めてデニス・ホッパーの名を知った人は多いと思う。それまでも、ジェームズ・ディーンの「理由なき反抗」(55)や「ジャイアンツ」(56)に出演するなど、キャリアは重ねていたが、何となくパッとしなかった。強く印象に残らなかった。

うだつの上がらない役者。その運命が「イージー★ライダー」で一転する。演技者としてばかりでなく、監督としても高い評価を獲得し、たちまち次回作のオファーが舞い込む。だが、事は順調に運んではくれない。

ホッパーとしては、「イージー★ライダー」の同工異曲を仕立ててお茶を濁すわけにもいかなかったろう。気負いもあったか、「ラストムービー」(71)という題名のその新作は、難解かつ前衛的。

昨年末に日本公開されたが、「イージー★ライダー」の明快さとはほど遠く、ホッパーは同作の興行的失敗によって長期にわたりハリウッドから遠ざかることになった。

本作は、この「ラストムービー」を編集するため、ニューメキシコ州タオスの隠れ家で生活するホッパーの姿を追ったドキュメンタリーである。

ただし、ホッパーはドキュメンタリーを撮ることには反対であり、「ラストムービー」を編集中のホッパーを、ホッパー自身が演じる映画、というのがこの作品の正しい定義らしい。

隠れ家には、制作スタッフ以外にも、ホッパーとの関りを求めてやってきた若者たちが集まり、ちょっとしたコミューンの様相を呈した。

そんな状況の中、ホッパーはカメラが向けられていることを意識してか、奔放な行動を見せる。住宅街を全裸でうろついたり、女性3人と一緒に入浴したり、荒野で銃をパンパン撃ちまくったり――。

つねに饒舌でもある。少年時代にレスリー・キャロンやエリザベス・テイラーを空想しながら枕を抱いて寝たこと。今も、一日の仕事を終え、眠りにつくときは、少年期と同じように彼女たちや前妻のミシェル・フィリップスを思うこと。

告白めいた話が披露される一方、マリワナ=マリー(marry)ワナ(wanna)=結婚したい、なんてダジャレも飛び出す。

気の向くまま、欲望の赴くまま振る舞い、思いついたことを喋りまくっているように見える。ホッパーが言うように、それは飽くまでも演じられたホッパーなのだろうか。

しかし。「ラストムービー」が失敗したら? そんな問いに対しては、「『イージー★ライダー』以前のように、またマットレスで寝るだけだ」。そう答えるホッパーの言葉に嘘はなさそうだ。

完成から50年近くたっての日本公開。その後のホッパーの歩みを知ったうえで、いま見てみると、その言動はいかにもホッパーらしく、演技などではない素顔の彼自身が写し撮られているように思える。

今回は「イージー★ライダー」も同時上映される(日本公開50周年記念特別上映)。併せて鑑賞し、ホッパーの魅力と才能を改めて堪能してほしい。

『アメリカン・ドリーマー』(1971、アメリカ)

監督:ローレンス・シラー、L.M. キット・カーソン
出演:デニス・ホッパー、ローレンス・シラー、L.M. キット・カーソン

2020年2月1日(土)より、渋谷ユーロスペース他全国ロードショー。「イージー★ライダー」同時上映

コピーライト:©Palaris Communications.inc

『イージー★ライダー』(1969、アメリカ)

監督:デニス・ホッパー
出演:ピーター・フォンダ、デニス・ホッパー、ジャック・ニコルソン