外国映画

映画レビュー「パラサイト 半地下の家族」

2019年12月26日
半地下で暮らす貧しいキム一家。高台の豪邸に住むIT企業の社長一家に雇われ、豊かさを満喫するが、そこには思わぬ落とし穴が。

格差社会の悲喜劇

キム一家は、半地下の家に暮らす貧乏ファミリーだ。事業の失敗を繰り返し今は無職の父ギテク。元ハンマー投げ選手だという母チュンスク。大学に落ち続けている息子ギウ。同様に美大進学の希望が叶わない娘ギジョン。要するに、誰一人として金を稼いでいない。

そこに、吉報が舞い込む。ギウが友人から「留学するので代わりに英語の家庭教師をしてくれないか」と依頼されたのだ。勤務先は高台の豪邸。IT企業の社長パク・ドンイクの自宅だ。

合格こそしていないが、受験経験は豊富なギウ。ニセの在学証明書が疑われることもなく、すんなり採用される。教え子の女子高生も、ギウのことがすっかり気に入ったようだ。

パク一家では、絵画の才能がある息子の家庭教師も探していた。ギウは、美大志望の妹ギジョンが適役と直感。米国の名門大学出身のプロとして彼女を一家に紹介する。ギジョンは持ち前の演技力を発揮し、たちまち一家の信頼を勝ち取る。
こうして二人は、パク一家に懐深く入り込んでいく――。

悪知恵の働くギジョンが次々と姦計をめぐらし、新たな雇用を開拓していく、中盤からのスリリングな展開が見ものだ。「プリースト 悪魔を葬る者」(15)で注目された若手の演技派パク・ソダムがギジョンに扮し、父親役のソン・ガンホとともに、圧倒的な存在感を見せている。

順調に推移するパラサイト(寄生)作戦。しかし、ある日、突発的な出来事によって、全てがひっくり返る。

富裕層と貧困層との対立が顕在化し、激甚な階級闘争として描写されるクライマックス。低地と高台という対比で格差社会を露呈させる終盤。緩急つけたダイナミックな構成。ポン・ジュノ監督の作劇術は、今回も冴えわたっている。

第72回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞。

パラサイト 半地下の家族

2019、韓国

監督:ポン・ジュノ

出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン

公開情報: 2020年1月10日 金曜日 より、 全国ロードショー

2019年12月27日(金)より、TOHO シネマズ日比谷、TOHO シネマズ梅田で先行公開。

公式サイト:http://www.parasite-mv.jp/

コピーライト:© 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

この映画をAmazonで今すぐ観る

この投稿にはコメントがまだありません